波しぶきを封じたビンの中で

 全ての生命は動くか動かされるかしている。植物であろうと、数万年前の地層に封じられ仮死状態になった線虫であろうと変わらない。

 海は、静かな状態であってもなにがしかの流れを保っている。それがある一定の範囲を越えると波が生まれる。

 海はあらゆる生命の出身地である。

 しかし、本作で語られる水族館はその真反対を展示している。館長の口で輝く金歯は、錆びも朽ちもしないという点だけは水族館の一面を象徴していた。それを打ち破ったのは主人公達の純粋な善意だ。

 大詰めに鯨をもってきたのが実に快い、作者入魂の傑作である。

 必読本作。

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