毒と告、白からず

 必要最小限の材料でどれだけの作品ができるか。

 本作は、一つの理想的な回答をもたらしたといえよう。

 なによりも、主人公の粘りつくような人格と語り口調がいつまでも心に……記憶に、ではなく……残る。すくいあげるような上目遣いで、猫背気味な、しょっちゅう自分の唇をなめまわすような人間をつい想像してしまった。

 謎解きの仕掛けがまた、この上なく簡潔であるにもかかわらずうならされる。

 必読本作。