荒涼

 無数の虫がうごめく沼沢に、裸足でさ迷う孤独な人影。それが、本作から通して得られる印象だ。しかも、足はトゲや石で傷まみれな上に化膿しており、疲弊しきって目もろくに開けられない。

 そうまでして、そんな犠牲を押しつけてまで清めねばならない……または祓わねばならないケガレとは何なのか。正体を知ることで、解決につながるのか。読者はとにかく知らねばならぬ。知らねばならぬが、もうその段階で、すでに同じような沼沢に踏みこんでしまっている。

 倒れたら、その死体は腐乱し、さらなる沼沢の拡大へと結びつく。だから、安心して良いではないか。次なる訪問者を待つ楽しみを手にできるのだから。

 必読本作。

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