香り高く、時々苦く、やっぱり甘く

 やる気ゼロの新人が、プロフェッショナリズムに目覚めていく痛快無比な傑作。

 スーパーの青果売場という舞台は、ありそうでなかった題材ではなかろうか。私自身、本作を読んで全く知らなかった食材をいくつか知ることができた。また、商品の発注から仕分け・販売といった流れが物語の面白さを損なわない形で理路整然と説明されている。

 およそ仕事なるものは、光もあれば影もある。いいことづくめなはずがない。しかし、だからといってふて腐れていいことでもない。

 主人公は、そんな当たり前なことを一つ一つ積み上げ成長していく。世の中まだ捨てたものではないなと思うし、他の読者とともに応援したくもなる。

 なにより本作は、賑やかでいきいきした商いをあますところなく体現している。これほどの充実した読後感はめったに味わえないだろう。

 必読本作。

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