作品の圧倒的なパワーに序盤からグングン引き込まれました。「老害対策法」なんて一見冗談のような法律にみえますが、これが本当に施行され、訴えられた老人たちがいとも簡単に死刑になってゆく。この理不尽がものすごいリアリティをもって迫ってきます。
淡々と切り捨てるように命が落とされる展開に抵抗を覚える方もいるでしょう。でもその原因は、無責任なモンスターと化した群集心理。その中に自分は入っていないと言い切れるでしょうか。
簡単になびく世論と政治の裏側ではびこる不正をあぶりだす完読必須の意欲作です。最後まで読み切った先に何が見えてくるか。それは読了した人へのプレゼントであり、課題でもあると思いました。
通報された老人は全員が審判にかけられ、その様子は生放送される。国民投票によって老害と認定されれば即銃殺刑、されなければ無罪放免。そんな「老害対策法」が制定された日本を描く、社会派理不尽ホラー。
タイトルだけでインパクトがすごいです!
冒頭で語られる老害対策法の内容は穴だらけで、その時点からあれこれ考えることをやめられませんでした。予期した不安が物語の中で的中したり、想定していなかった視点が飛び出したりで、ずっと思考と心が動かされ続けました。
この法だけを見るとリアリティ・ラインは低いです。でも、作中で描かれる人間や問題に目を向けると、ついつい現実にある色々なものと重ねてしまいました。
それらの思考と心の動きは、すべて自分に返ってくるように感じました。読者は作中で起こる様々なことをジャッジすると同時に、作品によって読者もまた、人間性を試されている。そんな感覚になりました。
様々な人間を巻き込みつつ、物語は転がっていきます。心が痛い。悪意が怖い。でも、人は正論ばかりでは生きられない。
狂っていく個人。その一人一人が作り上げる日本という国。物語の行く末を、是非ご自身の目でお確かめください。
『老害』問題に、思いもよらない形でメスを入れた作品です。
読めば読むほど、いろいろ考えさせられます。
物語は20XX年、大豆生田賢治内閣総理大臣が、ある法案を施行したことにより始まります。それは、過去に例のない特殊なもの。
法律となった『老害対策法』は、告発された老人が老害審判にかけられ、死刑になるか無罪放免になるかの二択を選択する法案です。
この作品が問題作である理由に、その決定方法にあります。恐ろしいことに、老害と告発された老人は、一般人の投票によって、五割以上が賛成すれば、その場で射殺されるというのです。
容赦ないです。
「老害」認定で、どんどん死んでいきます。
もう、思いっきりよく殺されます。
まさか、この人もと思った老人も死刑になってしまいます。
1話1話、老人の生き様が語られ、それによって、老人たちの運命が決まります。オムニバス方式で描かれる今作、とても読みやすい文章ですらすらと読み進めてしまいます。
1話読めば、あなたも、この作品の虜になるでしょう。
まさに問題作です。
どうぞ、お読みください。
もうとにかく、読んでくださいとしか言いようがない。
確かにこの話は、現実にはいくら何でもあり得ないものである。
あるかもしれない、ではない。あり得ないものである。
ちょっとしつこく述べたが。
だが、ここで起きている様々な人間模様は、本当に、本当に、
決してあり得ない絵空事と言い切れるだろうか?
形を変えて、この世で起きていることばかりではないか。
私には、そんな気がしてならない。
今ふと、私自身が思ったことを一つ。
私はこの6年間にわたり、過去の自分自身の周辺で起きたことを、こちらカクヨムでの公開に限らず、自己出版による書籍化も含めて、詩や小説という形で書きまくっています。過去の題材をフィクションにしているとはいえ、過去に自分と接点があった人を厳しく断罪しているような描写も少なからずあります。
実は、私が今やっていること(=執筆から出版に至る全般を指します)も、この作品の主人公である悪党らと同じ側面があることにも気づかされます。
読んでいて、確かに恐ろしさも感じます。
いくらなんでもそれはないだろうとも思うその一方で、かすかながらも清涼感さえ感じるのは、気のせいとも思えないのです。
その正体を、探ってみたいですね。
「老害対策法」。
簡潔、かつ衝撃的なこのタイトルを一目見て、どきりとするかたは多いと思う。
高齢化社会が極まる今の時代、誰しも一度は「老害」という言葉を思い浮かべたことはあるのではないだろうか。
タイトルにもなっているこの法律は、65歳以上の高齢者が、市民により『老害』と告発され、ネット投票で『認定』が過半数を占めた場合、その対象者は即銃殺されるという、かつてのバトル・ロワイアルを思い起こしてしまうトンデモ法。
この法案の施行により、告発された老人たち、そして関係者たちの地獄が次々に展開される。
どう見ても老害としか思えない者、逆にどう見ても好々爺にしか見えない者、多くの家族に囲まれ幸せに老後を過ごしてきた者――様々な高齢者たちが次々に告発され、ネット投票により容赦なく審判を下されていく。
「老害」というキーワードにまず目を惹かれますが、次第に明らかになっていくのが「ネットの悪意」の恐ろしさ。
更新のたびに深呼吸してページを繰りにいく作品は初めてかも知れません。
こんな法律を施行したこの国の行く末は、いったいどうなってしまうのか。暴走する政府を、ネットを、誰が止められるのか。
個人的にカクヨムコン9、最大の注目作です!
人間、年を取れば取るほど頭が固くなり、傍若無人になりがちです。
それにより周囲に迷惑をかける老人を『老害』と揶揄する風潮は、リアルに存在します。
本作は、そんな『老害』を断罪する法律が施行された日本社会を描く問題作です。
首相の独裁状態で定められた法の下、老害審判の方法はセンセーショナルかつショッキング。
密告により『老害』候補となった者には全国中継で弁解の場が設けられ、刑の執行は国民投票に委ねられます。
匿名での密告制度。
無責任な傍観者たちによる投票。
はたして何が起きるのか、想像には難くないはず。
さまざまな立場の人の視点で語っていく群像劇形式が、またお見事。
この法律によって何が起きるのか、真の問題はどこにあるのか、多角的に炙り出されていきます。
間違いなく今期カクヨムコン一の問題提起作と言えるでしょう。
この社会がどんな道を辿るのか、あなたもぜひ見届けましょう!
【第9回カクヨムWeb小説コンテスト】応募作です。
時の大豆生田総理は、さまざまな手段を用いて「老害対策法」を施行させた。
当初から反対していた佐宗厚労相の存在は総理には邪魔でしかなかったのだが、若手のホープとして国民ウケがひじょうによい。
そんな中で初めての「老害申し立て」が提起された。
役所はプロフィールムービーを作って、被告を処刑されないようにと努力していた。
老害審判はテレビで生放送されるのだが、そこで処刑の可否をネットに委ねている。処刑シーンも生放送だ。
しかし役所の力及ばず最初の犠牲者が出た。
そこから始まる理不尽な「老害申請」と匿名板での「煽り」によって、次々と老人が処刑されていく。
この時代の正義とはなにか。金の力で強引に押し通す大豆生田総理を止める手段とは。大豆生田の天敵である佐宗厚労相の暗躍とは。
そして今日も、老人が理不尽に処刑されていく。