『毒を以て毒を制す』だったのかもしれない

老害の権化たる首相が、経済の落ち込みや若者の就労意欲の低下を老害のせいにして、老害たる高齢者の撲滅を企む。
だが、その手法は、国民に丸投げ。
恐らく、国連で人権問題を指摘されても、国内においては『権力』という鎧で守られると思っていたのだろう。
いや、もしかしたら人権なんて概念、持ち合わせてもいない俺様だったのであろう。
老害対老害の構図。
その理不尽を正すべく、立ち上がった若きヒーロー。

が……。
この作品が問うているのは、もしかしたら、丸投げされた国民の意識の方かもしれない。
死刑判決にエンタメのように熱狂し、有罪に投票する名無しの一般人。
その心に潜む妬みや憂さ晴らし。

老害対策法は、荒唐無稽な法案ではあるけれど。
似たようなことは、現在の現実世界でも起きている。
自分を正義だと信じ、糾弾する。
それに乗っかって、知りもしないことを無責任に拡散する名無しの一般人。
そして、それは、時に、人の命を奪う。

今作の中で、乗っかって熱狂する名無しの死神たちは、最後には、新首相の言葉に流され、翻意し反省。
その後に訪れる少し優しくなった社会。
これは、大豆生田という毒が、心ならずも、不寛容な社会という毒を制したと見えなくもなく。


誰もが自分の姿を見ようとしない。
そんな社会に一石を投じた作品なんじゃないかな。と、思うのだけれど。
(知らんけど~)

続きが気になって、サクッと読めてしまう作品。
まずは、読んで頂きたい。
百人読めば百通りの解釈。
内なる『名無しさん』と向き合う機会になればいいなと思います。





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