後宮という華やかなりしも閉ざされた檻の中で、やがて朽ちると心に決めていた貴妃は、突然嵐のように現れた若く壮健な皇子に迫られてしまいます。貴妃三十五歳、皇子二十五歳。十歳年下。果たして彼はどこまで本気なのか? あるいはただ単にからかっているだけなのか?
だが、彼女はそもそもが彼の父である帝の女であった。そして、ここは後宮。彼を受け入れることは、重罪に値する。
しかし、すでに帝の愛は冷め、彼が通うのは若く愛らしい妃たちのもと。あとは枯れて朽ちてゆくだけの彼女に、彼の接近はあまりに熱かった。
ちょっとヒリヒリする恋愛譚です。これは果たして悲しい結末につながる悲恋なのか? 破滅への愛欲なのか? だが、禁断の果実はあまりに甘く……。
主人公に迫る皇子が、これまた格好いい。
その皇子視点で読むと、少年期に憧れた綺麗なお姉さんを、成長して自分の胸に抱く、しかも父から奪い取って……とか男子が興奮する設定になっていて、なんともエロい。
だが、それは許されるのか? それこそ処刑エンドへまっしぐらなのでは? このまま突き進んで良いのか? ハラハラします。
恋してはいけない相手。だからこそ、燃え上がる不倫の恋。さあ今こそあなたもこの禁断の果実を食すとき!
かつては皇帝の寵姫であった淑華。
しかし、今や皇帝の夜伽も途絶え、ひそやかに暮らす毎日。
十五で後宮に入り既に二十年。今や彼女も三十五歳……
どこか生きることに諦めたように静かに暮らす淑華でしたが、ある時、後宮に北の流刑地から美貌の第二皇子が帰還します。
年齢は十歳も下。
かつて北の地に追いやられる前の彼に会ったことはありましたが、その時とは見違える魅惑的で目の離せない男に姿を変えていた第二皇子、威龍。
彼にはある目的がありました。
そんな威龍の存在は、心を殺し、ひっそり暮らしていた彼女の心を次第に変えていきます。
背徳的で禁断な大人の恋。でも、絶対に読者は応援してしまうはず。
禁じられたロマンスに、ぜひ浸ってみてください。
■あらすじ
皇后亡き後、後宮の差配を任された貴妃の淑華。
後宮に閉じ込められて20年の歳月を経、今や寒閨をかこつ身となった彼女は、皇帝の寵を競う女たちの戦いから身を引いて久しい。
そんな彼女の前に、凍てつく北の流刑地に送られていた美貌の第二皇子・朱威龍が現れる。
威龍は18年前、皇太子の毒殺に関与したとして処刑された妃を母に持っていた。
それに疑問を抱いていた彼は淑華に近づき、当時の記録を調べることを頼む。
が、必要以上に距離を詰めてくる彼に、戸惑う淑華。
威龍が淑華に見せる好意は、目的を果たすための策略か。或いは……?
本編全41話の長篇恋愛小説です。
■おすすめポイント
(1)繊細な筆致で描かれる複雑な心理描写と趣深く薫り高い文体
本作一番のポイントは、登場人物が抱える複雑な心理描写だと言えます。
それが、繊細で趣深い筆致で描かれています。
非常に味わい深い文章で、あまり派手な出来事が次から次へと起こってくる訳ではないですし、直截的な表現がある訳でもないのですが、だからこそ漂う色香。
そんな描写の数々に、色々と想像されて、ドキドキさせられてしまいます。
(2)それぞれに“さびしさ”を抱えた、魅力的な登場人物たち
大きく見ると、この物語は、皇帝である朱棣林と、その妃である淑華、そして、皇帝の第二皇子である朱威龍の三人の三角関係でもって展開されています。
国の安定の為に尽くし、そのための判断を非情なほどに冷静に下す皇帝。
寵はしても愛しはしない皇帝の妃として、諦念の中で静かに暮らす淑華。
謀反を企てた妃の産んだ皇子として北の流刑地で苦渋を耐え忍んだ威龍。
それぞれがそれぞれの立場なりの“さびしさ”“孤独”を抱えているようで、
一方でそれが何か、それぞれの魅力を引き立ててもいるようです。
(3)道ならぬ関係の行き着く先は、破滅か、或いは……?
策略であると思いつつも、威龍に惹かれていく淑華。
道ならぬ関係とおそれつつも、傾いていく心を止められない。
果たして威龍の真意とは……?
是非、本編でお楽しみ下さい!
■こんな方に
☑中華後宮ものが好きな方
☑繊細に描かれた複雑な心理描写を味わいたい方
☑駆け引きのある大人な恋愛小説を読みたい方
後宮に連れてこられて20年。
かつて寵姫ともてはやされた主人公も、今では、帝のお渡りも途絶え、後宮の片隅『秋の間』でただひっそりと生きている。
20年間で得たものは、後宮での地位と役職・帝の信頼。
でも、彼女が心から欲していたものはそんなものではなかった。
そんな時、北の地に幽閉されていた美貌の第二皇子が戻ってきた。
彼は、執拗に主人公につき纏い。
その真意は、思慕の情だけだろうか。
第二皇子に翻弄される自分を笑い、打ち消しても、揺れる心は嘘を付けず。
愚かな事だと自覚しつつ、傾いていく想い。
そんなこんなが限りなく美しく繊細に描写されている作品です。
少し大人なモチーフではありますが、素晴らしい筆致・心理描写を拝読するだけでも価値ありです。
後宮というと、皇帝に愛され、権威と幸福を勝ち取る話と思うだろうか。
だが、本作の主人公淑華は後宮で序列二位である貴妃という立場でありながらも、後宮における生活から身を引いていた。
かつては皇帝の寵姫。しかし今は、夜伽も途絶える。
タイトルにもあるように、緩やかな死の中にいるように彼女は常に寂しさの中にいる。皇帝との邂逅があっても、恋人のような熱情は無い。
本当に、そのまま心が死んでしまうのではないかとすら思われた時に現れたのが、第二皇子である威龍だった。
二人の場面は、皇帝の貴妃と第二皇子という間柄だけには留まらず、どこか背徳的でもあり、威龍の眼差しには意味があるように思えてしまう。
それまで秋の終わりの如く儚かった淑華の世界が色づいたような。
美しい年下の皇子と、皇帝の貴妃の物語。
一度覗いてみて頂きたい。
オススメです。
十五歳で後宮に入り、一時は寵妃の立場にいたものの、いまは後宮の片隅でひそやかに日々を送るだけの三十五歳の淑華。
そんな彼女が出逢ったのは、かつて後宮で起こった陰謀により、遠い北の地に隔離されていたものの、皇帝により都へ呼び戻された美貌の皇子・威龍だった。
後宮の妃嬪達を惑わす絶世の美貌の主でありながら、なぜか淑華に近づこうとする威龍。
だが、皇帝の妃である淑華と、皇子である威龍が結ばれる未来など、あるはずがなく――。
揺れ動く淑華の心や二人のやりとりに、いったいどうなるんだろうとはらはらしっぱなしになります。
また、しっとりとした色気の漂う雰囲気がとても素敵です!(*´▽`*)
二人がどんな結末を迎えるのか、どうぞご自身の目でお確かめください。
主人公の淑華は後宮に納められて20年。
夫である皇帝は武勇に優れ統治能力も高いですが、女性に対しては微塵も愛情がありません。
せめて愛情があるふりをすればいいのですが、そんな細やかさもない男。
後宮内で敵を作らず、冷え切った灰のような心を抱えながら緩慢に生きていた淑華の前に現れたのは父である皇帝に母の一族を誅された皇子威龍でした。
最初は他の人と同じように淡々と接する淑華でしたが、灰の中の熾火はまだ完全には消えておらず……。
端的に言えば不倫です。
でも、まあ、そういう選択をしちゃうのも分からなくはないよねという心情が描かれます。
人間生きていれば合理的な判断ばかりじゃないですもの。
15歳で後宮に入って以来二十年、ずっとそこで生き続けている淑華。
おかげで後宮内では序列二位という高い立場にいるのですが、後宮であるような権力争いなどからは一歩引いた立場にありました。
というのも、帝にとっては国を治めることこそ第一であり、後宮もそこにいる女性たちも、そのために有益かどうかが第一というのを知っているから。そのため、どこか虚しさすら感じています。
そんな中彼女が出会ったのは、流刑地から戻ったいわく有りの第二皇子、威龍。
十八歳前にも幼き彼と出会ってはいるのですが、その時とは見違えるくらいに、そしてどこか怪しくも魅力的な男へと成長していました。
もちろん、どんな男性になっていようと、淑華は帝の者。
そのはずなのに、次第に彼に惹かれていくことに。
しかし彼には、何か秘めたる目的があるようでした。
後宮という、外界とは異なる特別な場所。そこで生き続け、真の愛を受けることのなかった淑華。
彼女の運命は、どのように変わっていくのでしょう。
帝の貴妃として、後宮で穏やかに過ごしている淑華。
食うことに困っている貧しい人たちから見れば、幸せな暮らしかもしれません。
ですが、淑華は後宮で存在を示したいわけではなく、帝の愛を欲して他の妃の動向に目を光らせているわけでもありません。
常に一歩引き、帝の良き友として物分かりのいい女性を演じている。
自分の望みから遠く離れた人生が、淑華に諦めと孤独をもたらしているのでしょう。
ですが、10歳年下の威龍との再会が、淑華を変えます。
本来の淑華は、もっとずっと情熱的な女性なのかもしれません。それこそ、すべてを投げ打ってもいいから、心から愛する人と一緒にいたいと願うほどの。
淑華は帝の貴妃です。そして、威龍は帝の息子。二人が愛し合うのは、背徳的であり、禁断であり、死をも意味します。
読者は、二人がどうなっていくのか。帝にバレないのか。未来に何が待っているのか。
ハラハラしながら、読み進めることでしょう。
二人の愛がどうなるのか。どこに辿り着くのか。
最後の最後まで、ドキドキしながら読んでみてください。
皇后の死後、後宮の運営を任されている淑華。
かつては帝の寵妃であった淑華ですが、もはや帝は興味を示さず。
そんな淑華の前に現れたのは、流刑地から戻った曰く付きの第二皇子、威龍。
見るものを虜にする美しさを持つ威龍ですが、彼にはある目的が。
それは幼い頃、自分や母に無実の罪を着せ、流刑にさせた犯人を見つけること。
無実の罪を着せられて苦しい思いをしてきたのですから、犯人を見つけたいという気持ちはよくわかります。
さらにこの威龍、事件があったとき唯一手をさしのべてくれていた淑華に、特別な思いを抱いているようで。
イケメン皇子に気に入られるなんて淑華、やるじゃないですか!
しかし後宮に勤めてる以上、皇子とよからぬ噂なんてあってはならない。
だというのに、計算しているのかそれとも素なのか。怪しくも不思議な魅力のある威龍に、ペースを乱されっぱなし。
翻弄される淑華は、威龍とどう向き合うのか。
ミステリー風味もある、中華の後宮恋愛物語です。
後宮で20年過ごしたことで名実ともに、とは言えずとも、図らずも後宮の事務方トップに君臨することとなった美女、淑華の生と死の物語。
一代で国を統一したほどの武を誇り、しかし、どこまでも現実的な帝の棣林。追放刑に処されていた息子の威龍。夢想家で、父の血を色濃く引いた威龍は若さと、その復讐心から父以上に魅力的である。心をすり減らし、政治の手腕を身につけ、緩慢な死を迎えるはずの淑華は、二人の男に魅せられて、どちらに傾き、愛するのか。揺れる心の描写が美しく、きっと最後まで読みたくなるだろう。
恋愛模様だけではない。後宮とは、寵愛を受けるために必死に駆けずり回る美しき怪物たちの伏魔殿、そういう面はもちろんある。文官と変わらずに生きる者たちにとっては、政治の場所に過ぎない。その様子が冷酷に描かれているのが魅力的な作品だ。国、政治がどうあるべきかも教えてくれる気がする。
15歳でさらわれるようにして後宮に入った淑華。
帝は武力で大陸を統一した凄腕の人物であり、魅力的な容姿を持つ彼の妃となるものの、十代の淑華とって帝は大人も大人。何より帝には共に戦地を駆け回った頼もしい皇后の存在がいる。
一時は寵姫だったた時期があるが、帝との関係は、腹を割った関係でも熱烈に愛し合う関係でもない。というより、この帝が興味を持つのは統治であって女ではない。帝にとってたぶん淑華は物わかりの良い、使い勝手が良い人材といったかんじ。
それでも後宮という場ですから、淑華の他にも妃はたくさん。若い子が次々やってくるわけで、そんな中、二十年。淑華は嫉妬の渦に飲まれないよう慎重に生きてきた。
自分は冷静で激しい感情を持つことはない。そう思いながらも、どこか物憂げに、ただただ日々が過ぎて行くままに身をゆだねていた淑華だったが……。
流刑地から第二皇子が呼び戻されたことで、彼女の日々は少しずつ浸食されるように変わっていく。そして、あの夜。彼女は蓋をしていた自分の感情に気づいてしまって——。
美しい描写で綴られていく一人の女性の物語。
時代背景は現代とは違うものの、いつの時代、舞台であっても、希望を抱くこと、情熱を持つこと、やりがいを感じること、など、生まれる感情には共通するものがたくさんあります。それらを淑華という人物を通して丁寧に描きながら、一転、物語は加速的にクライマックスへ。その姿は危うげですが、とても美しいと感じさせる力のある作品です。
そろそろ完結間近のご様子。美しくも妖しい中華後宮の世界観にひたりたい方、おすすめです。
忙しいのに。2日間で最新話まで読んでしまった。
魔性的な魅力を持つ作品である。
物語ははじめ、主人公、淑華《シューホア》の、寵愛の薄れた妃としての寂しさ、そして、どうやって妃となったのか? から語られる。
実はここが重要で、これがないと、淑華の人となりが見えてこないのである。
彼女は、夫である帝を愛した。
愛された。
しかし今は、帝は彼女をおしゃべり相手としては尊重するけど、男女の仲ではない。
(愛、といっても、単純な愛、ではない。帝、妃である立場、それらから離れて成立することはない関係だからである。お気楽なカップルの愛ではありえない)
そこで現れた魅惑の年下皇子。
彼はわけありであり、美貌が咲き誇るよう。
微笑めばそれだけで甘い凶器となる。
そんな年下皇子から熱烈にせまられる事になる淑華。
愛なの?
策略なの?
翻弄される。
帝を愛してないわけではない。
美貌の年下皇子に惹かれてしまう気持ちもある。
35歳の女は、どうしたら良いのか?!
心理描写が丁寧になされ、読者はスンナリと物語の世界に入っていけるだろう。
淑華は美女である自覚はあるが、おごったところはなく、後宮にあっては控えめで、派手好きでもない。
聡明で、癒やしの波動を放っている女性。
そんな彼女に、ハラハラしながら読者は読書を楽しめますよ!
オススメです。
危険な男を書かせたら右に出る者はいない。そんな作者さまが今回描くのは、10歳も年下の甘い男。
多くを望まず、凪いだ日々を甘受する貴妃・淑華。彼女の前に突如として現れたのが、流刑地から戻ってきた皇子・威龍です。
この若く美しい皇子が、何かと淑華に絡んで甘えてくるのだから、もう大変ですよ。
正直、私だったら一瞬で陥落していますね。とにかくヤバい男です。
どこまでが天然でどこからが計算なのか。
愛されて当然みたいな振る舞いをしながら、時々瞳の奥に深い悲しみを覗かせるのは反則でしょう。
彼は帝の息子。間違っても、この後宮で何らかの関係になるわけにはいかないのです。
諦観と達観をまとい、内に秘めた渇望に気づかぬふりをしながら賢く柔軟に物事を選び取る淑華が、どこか危うくて魅力的。
男女の機微を的確に描き出す、洒落た会話や磨き抜かれた描写が、物語を彩ります。
威龍が流刑に処される原因となった18年前の事件をめぐり、淑華、威龍、そして帝の三者のバランスは変化していきます。
水面下の力関係、交錯する愛憎、蔓延る権謀術数。
全ての謎が詳らかにされる時、後宮で何が起きるのか。
ラストまで一瞬たりとも見逃せません。おすすめです!
思慮深く、どこかアンニュイで、強く、同時にあやうい。女のいろんな面を併せ持つヒロインが素晴らしく魅力的です。
後宮という特殊な場所で貴妃として君臨する主人公の淑華は非常に賢明で知的な女性ですが、この場所で二十年という年月を過ごしてきたひとりの女の哀愁と諦観がつきまとい、虚しさや孤独を抱えながら表面だけは静かに凪いでいる水のような印象を与えます。
しかし、流刑地から戻った第二皇子の登場が、まるで水面に投げ込まれた石のように彼女の心に波紋を起こし……。
機知に富んだ会話の妙と、男女の機微が丁寧に描かれる文章。そこにミステリの要素が絡まり、愛憎が渦巻く後宮の世界に引き込まれます。
孤独な女の心に起こった波紋はどのように広がっていくのか。帝や後宮の女性たちとの関係は。そして皇子が流刑されるきっかけになった事件の真相とは。
各章のエピソードを繋ぐ詩のようなタイトルにも、ヒロインの心情を綴る作者の細やかなこだわりを感じます。華やかで妖しい東洋の美が散りばめられた恋愛文芸です。