加瀬さんが警官になったのは、運命だったのでありましょう。
鎌倉時代から連綿と受け継がれてきた怨念を抱えた九暁家。
両親の仇討ちに執念を燃やす三賀警視。
本人の知らぬところで因縁に導かれた加瀬巡査部長。
三者が出会った時、終わりが始まった。
が……。
相手は、呪い。
捕えて裁くことも、殺すことも出来ない。
術者を捕えても呪いの立証は出来ない。
恐らく、加瀬さんが敏腕陰陽師であったとしても、払えないかもしれないくらい深い怨念。
どう決着付けるんだろ?っと思っていたら……。
おぉ!その手が有ったか!と目からうろこの解決方法。
これは、きっと、加瀬さんでなければ成しえなかったことでありましょう。
三賀さんが加瀬さんを選んだのは間違っていなかった。
そして……。
おどろおどろしい冒頭からは想像出来ない、優しく美しいラスト。
雨 杜和さん、さすがです。
とても面白いです。
どうぞ、読んでみてください。
この作品の魅力は確かにその入り組んだミステリーと言える。計算され尽くした、縦横無尽に張り巡らされた仕掛けと、その展開の妙味である。
いや、それもそうだが、やはり何といってもこの作品の魅力は、登場人物たちが織りなす、人間模様の美しさだろう。
言葉を話せない宜綺と、九暁家の巫女を産む代理母紫緒の静かでしかし燃えるような恋心の美しさ。
変わり者だが優秀なキャリア警官三賀と、彼にじっと思いを寄せ続ける藤島の愛の美しさ。
宜綺の兄にあたる彭爺と宜綺の、普通の兄弟にはない思いやりの美しさ。
あなたは怒涛のようなミステリーに酔いしれながら,思わずその美しさに涙している自分自身に気づくだろう。
つまりこれは、ミステリーの形を使って人間を描いた、底知れず深い美の物語なのである。
鎌倉で起きた家事と、その現場から見つかった三体の焼死体。しかしこれは、長らく続く闇の歴史の、ほんの一端にすぎなかった。
というのも、この死体が見つかった九暁家。実は呪術を主とする巫女の家柄で、裏では呪いなどという怪しげな行為や、法律に引っかかりそうなことも見え隠れ。
しかし有力者との繋がりもあり、警察でもなかなか触れられないという、非常にグレーゾーンな存在となっていたのです。
そんな中、タブーを破ってこの九暁家の謎を暴こうとする者たちがいました。
一人は、鎌倉警察署の刑事、加瀬。そしてもう一人は、はずれキャリアと言われている変わり者の警視、三賀。
加瀬が三賀に呼ばれたことで二人の縁と捜査が始まるのですが、実はこの二人、ただ警察の役目として謎を追うわけではないのです。
それぞれの過去に九暁家との浅からぬ因縁があり、それに決着をつけるため、今回の事件はもちろん、九暁家そのものの謎に迫るという、バディもの。
…………と、思ってました。途中までは。
いえ。今まで書いたことも決して嘘ではないのです。しかし途中で、予想を大きく裏切る事態が。
それは何だと気になるところかもしれませんが、それをここで書居て読ませるよりも、本文を見た方が絶対いいので書きません。
いったい何が起きるのか。そして、事件と昔から続く因縁に、どんな形で決着がつくのか。
意外な展開の向こうに待っているものは、ぜひ皆さんの目でお確かめください。
悍ましい出産の儀式から始まる本作。鎌倉の地に息づくある一族の禍々しい歴史が、物語の根幹を担っています。
終始緊迫感のある描写で、ページを繰る手が止まらなくなること請け合い。
警察サイドの捜査のシーンはリアリティたっぷりで、故に『呪い』や『怨念』といった人の手の及ばぬものの底知れぬ恐ろしさに説得力がありました。
第2部以降の主人公・加瀬が仕えることになる、三賀警視の存在感が際立っています。切れ者イケメンで、変わり者。
彼の抱える執念が見えてくるにつれ、物語は加速度的に面白さを増していきます。
緩急のある飽きさせない展開。
血の通った、あるいは血が通ってないんじゃないかと思えるほど異常な、個性豊かな登場人物たち。
八百年の呪いが如何にして終幕を迎えるのか、最後まで見逃せません。
結末はぜひあなたの目でお確かめください!
鎌倉時代から続く、呪術を使う曰く付きの家、九暁家。
令和の現代でも、九暁家は誰かを呪うことで繁栄していたけど、本作はそんな闇深いお家に挑む、刑事たちの物語。
物語序盤から異質すぎる九暁家の様子が描かれ、怨みや怒りが恐ろしいほどによく書かれていました。
そんな本作のキーパーソンとなるのが、九暁家に怨みを持つ刑事、三賀。
公私混同……いえ、私情10割といっていいほど執拗に九暁家の闇に切り込もうとする三加刑事の執着心は、まさに異常!
九暁家を追い詰めようとする執念には、恐怖すら覚えました。
ダークな雰囲気の、オカルトミステリー。
闇深いお家と、それを追う刑事たちの奮闘劇を、ご覧ください。
まだ第一章が完結した段階でこのレビューを書いていますが、この作品からは圧倒的禍々しさを感じます。
第一章は紫緒という女性が出産するまでが書かれているのですが、その出産シーンが凄まじいですね。そこに至るまでも物凄く禍々しく、出産シーンに至ってはゾクッとさせられるほどの圧倒的文章力を感じます。
彼女の世話をする宜綺(むべき)、彭爺(ほうじい)、そして出産に関わる男達。
タイトルの『半魂(はんごん)』が何を意味するのかは、現段階では分かっていませんが、この出産は呪われたものであるという事は分かります。
この作品、どうなって行くんだ……?
と、続きが気になって仕方ありません。
作者の雨杜和(あめとわ)様は、コメディーからホラー、ミステリー、異世界ものまで幅広く書かれる方です。
どの作品にも言える事は、読ませる力が圧倒的にあるという事です。
読んで損はさせません。オススメです!