概要
『半魂とは、魂の半分を怨念に冒された悲しい血族のことを言う』
【あらすじ(ネタバレ注意)】
相模湾に面して弧を描いた地形の鎌倉は、丘陵に奥深く入り込んだ谷戸(やと)が多く、鎌倉時代から有名な城塞都市である。
この地で連綿と血脈をつないできた九暁家は、呪術を主とする巫女の家柄。源実朝を暗殺した公暁を母方の祖先にもち、怨念の世界に生きてきた。
九暁家の当主、九暁辻湖は「巫女さま」と呼ばれ、政財界の重鎮にツテも多い。それは闇の呪術を使う巫女としての名声があるからだ。多くの人は祝福ではなく、呪いを求めて辻湖のもとを訪れる。
老齢になった辻湖には血族を存続する義務を持つが、後継者ができなかった。
それは他人の血が入ることを嫌い、近親相姦によって血脈を繋いできた弊害である。
鎌倉
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!鎌倉を舞台に、繊細な筆致で描かれる、禍々しくも美しい愛と生の物語。
■【あらすじ】
呪術を生業とする巫女の家系である九暁家。
その別宅がある朝、全焼した。
焼け跡からは三体の焼死体が発見される。
死因ははっきりせず、奇妙な点があった。
鎌倉警察署の加瀬巡査長は、
神奈川県警の三賀警視に呼ばれ、本署に出向。
ともに事件を追い始めるのだったが……?
■【おすすめポイント】
(1)圧倒的禍々しさ
本作品に興味を持たれた方は、兎にも角にも、まずは序章を御覧になることをおすすめします。
物語は、得体のしれない“何か”が産まれるところから始まります。
産まれようと、あるいは、産まれ“させ”られようとする命と。
それを産もうとする命と。
そして、それを産ませよう…続きを読む - ★★★ Excellent!!!脈々と受け継がれる巫女の系譜を終わらせるのは、執念? それとも怨念?
名家の別宅が全焼。
その焼け跡から三体の遺体が発見された。
この事件を契機に、謎多き名家である九暁家の実態が少しずつ明らかになる。
九暁家は呪術をおこなう家系。政財界に繋がりをもち、陰に暗躍する九暁家だったが、この度は何故か警察に目をつけられてしまい――
呪術、不可解な死、古くからつづく家系など、ほの暗い要素がいっぱい!そこに解決すべき問題も加わって――面白くないわけがないです!
三体の焼死体が発見される事件だけでも十分興味をひかれるのに、その後も新たな事件が起きて……
ハラハラ、ドキドキしました!
個人的に楽しく読んだのは、序章の登場人物たちが物語にどうか変わってくるのかです。彼らがそ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!怨念と執念と因縁と……からは、想像出来ないラストに涙することでしょう
加瀬さんが警官になったのは、運命だったのでありましょう。
鎌倉時代から連綿と受け継がれてきた怨念を抱えた九暁家。
両親の仇討ちに執念を燃やす三賀警視。
本人の知らぬところで因縁に導かれた加瀬巡査部長。
三者が出会った時が終わりの始まり。
が……。
相手は、呪い。
捕えて裁くことも、殺すことも出来ない。
術者を捕えても呪いの立証は出来ない。
仮に、加瀬さんが敏腕陰陽師であったとしても、払えないかもしれないくらい深い怨念。
どう決着付けるんだろ?っと思っていたら……。
おぉ!その手が有ったか!と目からうろこの解決方法。
これは、きっと、加瀬さんでなければ成しえなかったことでありましょう。
…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ミステリーよりも愛おしく、恋愛ものより感動的。
この作品の魅力は確かにその入り組んだミステリーと言える。計算され尽くした、縦横無尽に張り巡らされた仕掛けと、その展開の妙味である。
いや、それもそうだが、やはり何といってもこの作品の魅力は、登場人物たちが織りなす、人間模様の美しさだろう。
言葉を話せない宜綺と、九暁家の巫女を産む代理母紫緒の静かでしかし燃えるような恋心の美しさ。
変わり者だが優秀なキャリア警官三賀と、彼にじっと思いを寄せ続ける藤島の愛の美しさ。
宜綺の兄にあたる彭爺と宜綺の、普通の兄弟にはない思いやりの美しさ。
それらが心に染み入る美しい文体で表現されている。
あなたは怒涛のようなミステリーに酔いしれながら,思わずその美しさ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!八百年の因縁に挑む二人の刑事。しかし
鎌倉で起きた家事と、その現場から見つかった三体の焼死体。しかしこれは、長らく続く闇の歴史の、ほんの一端にすぎなかった。
というのも、この死体が見つかった九暁家。実は呪術を主とする巫女の家柄で、裏では呪いなどという怪しげな行為や、法律に引っかかりそうなことも見え隠れ。
しかし有力者との繋がりもあり、警察でもなかなか触れられないという、非常にグレーゾーンな存在となっていたのです。
そんな中、タブーを破ってこの九暁家の謎を暴こうとする者たちがいました。
一人は、鎌倉警察署の刑事、加瀬。そしてもう一人は、はずれキャリアと言われている変わり者の警視、三賀。
加瀬が三賀に呼ばれたことで二人の縁と捜査…続きを読む - ★★★ Excellent!!!脈々と継がれる怨念と、命を賭した執念と、未来につながる信念と
悍ましい出産の儀式から始まる本作。鎌倉の地に息づくある一族の禍々しい歴史が、物語の根幹を担っています。
終始緊迫感のある描写で、ページを繰る手が止まらなくなること請け合い。
警察サイドの捜査のシーンはリアリティたっぷりで、故に『呪い』や『怨念』といった人の手の及ばぬものの底知れぬ恐ろしさに説得力がありました。
第2部以降の主人公・加瀬が仕えることになる、三賀警視の存在感が際立っています。切れ者イケメンで、変わり者。
彼の抱える執念が見えてくるにつれ、物語は加速度的に面白さを増していきます。
緩急のある飽きさせない展開。
血の通った、あるいは血が通ってないんじゃないかと思えるほど異常な、…続きを読む