概要
魁《かい》国には、外戚の禍を避けるために、皇太子の生母は必ず死を賜るという法がある。
その残酷な法により姉を殺された翠薇《すいび》は、姉の子が健やかに成長して名君になることを願っていた。けれど、後宮の権力争いにより、その子までもが暗殺されてしまう。
怒りと悲しみの中で、翠薇はすべてに復讐することを決意する。魁国の法、皇帝、後宮の女たち──そのすべてに。皇后の地位も国母の栄誉も、生きながらにして手に入れることによって、法に盲従した者たちをあざ笑うのだ、と。
手始めに、翠薇は姉に似た容姿を利用して皇帝を篭絡する。あるいは皇帝の寵愛を笠に着て、あるいは野心を持つ臣下と結んで。競争相手を追い詰め、邪魔者を排除する彼女は、やがて悪女と呼ばれるようになるが──
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!復讐を誓ったファム・ファタル、翻弄された男たちの物語
魁国に古くから伝わる法により、姉を奪われた主人公・翠薇(すいび)。後に姉の忘形見である甥の命までをも奪われ、ついに魁国に復讐を誓う。
そうして彼女は知恵と美貌を駆使し、姉たちを陥れた者たちすべてに仇為していく——というのが本作のあらすじ。
復讐ものと言うと、仇を為すまでじりじり進むイメージですが、こちらは序盤からどんどん復讐が進みます。
翠薇がとにかくキレ者で、先の先まで読んだうえで、流れるように策を講じていくわけです。その手腕のなんと美しく恐ろしいことか。
そしてそんな息もつかせぬ展開が最後までずーっと続きます。最後までです。先が気になって読む手がマジで止まりません!
彼女のもうひとつ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!才色兼備、知略謀略を尽くす美女の圧倒的復讐譚……だけでは終わらない!?
『外戚の禍を避けるために、皇太子の生母は必ず死を賜る』
非道な法によって愛する姉を失い、さらに謀略によってその忘れ形見の甥をも失い、復讐を決意した翠薇。彼女は皇帝を籠絡し、後宮を牛耳る太后に取り入り、新入りの官吏を手駒にした上で、自らの身を囮にしてまでも政敵を陥れ、次々と廃していく。
これだけ聞くとなんという稀代の悪女か、と思ってしまうし、実際その通りなのですが、この物語の不思議なところは、読者として、それでも翠薇をどうしても憎みきれないのです。
そもそも非道なのは皇太子の母を殺すという法。そしてそれらに唯々諾々と従ってきた権力者たちであり、官吏たちでもあり。とはいえ翠薇の行為は…続きを読む - ★★★ Excellent!!!中華後宮ものながら、後宮におさまらない本格歴史絵巻!
後宮なのだから溺愛ハッピーエンドを目指すのかと思いきや、こちらはそういう物語ではありません。
後宮のはした女だった娘が、理不尽な法により姉を失ったこと、そして姉の忘れ形見までをも奪われたことから考えたこととは――?
少し間違えれば命をなくす、ぎりぎりのところで知恵をしぼり、立ち回る。
そうして目指すのは法を変え、国を手中にすること!
なんとも気宇壮大な、ひとりの女性の物語です。それが美しい描写とわかりやすい文章でつづられていき、息を飲みつつ読み進めました。
寵愛を一身にする美姫ゆえに、はたからは手練手管を弄するように思えます。でも心底にあるのは哀しみと怒りなのです。
芯の強い女の生きざま…続きを読む - ★★★ Excellent!!!華やかで繊細な女のオフェンス
このレビューは九話掲載時に記載しています。
魁国は、皇太子の生母に死を与える。それは国を保つ祖法である。
この作品の主人公翠薇は、姉を非情な祖法、甥を非道な暗殺で失う。
翠薇の悲しみ憤りはいかばかりか。作品にも現れるそれは、悲嘆と絶望を憤怒と変え、復讐を誓うまでに至る。
俠気満ちた男であれば、剣を持ち皇帝を太后を皇后たちを直接殺し尽くしたかもしれない。
しかし翠薇はそのような道を選ばない。
彼女は媚態を作り、慎ましさを見せ、しとやかな姿で従順な所作をする。
その言葉は薄氷を滑るような危うさの中で用心深く言葉を紡ぎ――相手に決めさせていく。
翠薇の思惑知らず、…続きを読む