戦争に敗れ敗戦国の王家で唯一生かされ戦勝国の国王の側妃となった母から生まれた皇女であったが、王家の苗字を名乗る事が許されず実母からも疎まれて育ち、王国が前国王の遺児である第一皇子と現国王の嫡子である第二皇子が皇太子の座を巡り貴族を二分する派閥争いを繰り広げる中、ヒロインである皇女は、腹違いの第二皇子に与して第一皇子派に率先して攻勢していたが、第二皇子と結ばれるという甘言が元から第二皇子には無く、悪事を染める捨て駒として利用され、最後には断罪される最期を迎えたヒロインであったが、何故か実母が殺害される前に転生し、彼女の機転で実母の殺害を未遂を留め、犯行の指示側が第二皇子派と知ると、転生前に裏切られた記憶と相まって、転生前の記憶と経験を駆使して転生後は、第一皇子を国王にすべく暗躍する展開に於ける準備の細かな描写に引き込まれ、ワクワク感満載で読み続けました。
基本的な設定は利用された悪役令嬢のやり直しリベンジもので、起こりうる未来を知っているのを利用して様々な策略を巡らせますが、その巡らせ方が文字通り数百手先を読む計算し尽くされたもので、作品に本格的で重厚な雰囲気を与えてくれています。
そもそもが数奇な生い立ちな上に2人の王子の王位争いとドロドロしそうな要素盛りだくさんにも関わらず、読んでいて気持がいいのは主人公が自分を騙した人々への「復讐」と同じくらい、自分が不幸にしてしまった人々への「贖罪」を重要視しているからでしょう。これこそがこの作品の最大の魅力であり、憎しみだけでなく罪悪感で深遠な謀略を巡らせる実に魅力的なキャラクターを生み出しています。
敵味方両陣営の魅力のあるキャラクターとの緊張感のある会話、物語の合間にあるちょっとしたトキメキ要素など読み出したら止まりません。先がとても気になる作品です。