信仰という名の『正義』が家族を壊す。歪められた愛に救いの道はあるのか

新興宗教に翻弄され、崩壊してしまった家族の物語です。
一家の母親・久美子が、幼少期から蓄積された苦悩から救いを求めたのが、怪しい『信仰』の道でした。
お勤めや高額なお布施、子供への躾に至るまで、教団の『教え』に染まってしまった母のせいで、一家は悲惨な末路を辿ります。

教祖によるマインドコントロールに加え、信者同士の競争心を煽るシステムなど、こうした宗教にハマっていく人の心理が非常にリアルでした。
信仰の自由があるとはいえ、親の信仰を押し付けられる子供たちに自由はありません。

未婚のまま妊娠し、久美子から関係の断絶と教団からの排斥を言い渡された娘・沙羅の視点から、母親の抱えた事情や恐るべき事実を追っていく展開。
一つひとつと背景が明らかになるにつれ、胸が締め付けられるような苦しさを覚えました。

久美子が子供たちに向けていたものは、紛れもなく『愛』だったはずなのに。
どうしてこうなってしまったのか。あまりの遣る瀬無さに、何度も涙が溢れました。

それでも、ラストはまるで霧が晴れるように、希望の光が見えました。
これからは本当の幸せが彼らに訪れるようにと、祈らずにはいられません。
深く心に刻まれる物語。きっと一生忘れられないお話だと思います。

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