肥満が医療費の増大などを招くとして『肥満禁止法』という法律が施行された近未来。
BMI30以上の国民から無作為に選ばれた男女が、トレーナーと一緒に無人島へ強制ダイエット合宿に行くことに……。
ダイエットに前向きな者、痩せる必要などないと思っている者、そもそも政策に反対の者……。
見ず知らずの一行にまとまりがあるはずがなく、さらには、そこに不穏分子がひとり紛れ込んだことで、健康に痩せるための合宿は……。
不穏な雰囲気を漂わせる合宿は、一度日常が崩壊すれば、坂道を転がり落ちるごとく、阿鼻叫喚の地獄へとまっしぐらに。
ホラーでありながら、ラストの読後感はさわやかです。
すでに完結済ですので、一気読みもどうぞ!
最初は、ダイエットの話だと紹介されました。作中の人物にも、読者にも。
しかし本作はホラーです。次第に変質します。
露わになるのは各人の身体ではなく心の内。
人の心は重いです。体重よりも重いです。体重がちょっと増えて「肥満だ!」と非難されたくらいでは関係は逆転しませんでした。
読み進めるほど心理戦に息が詰まります。もう運動や食事制限は頭の中から消えて、登場人物の容姿も忘れるほどに。
そして重要な裏のテーマを含んでいます。食事は、脳神経の病気ではなく人間関係のストレスから生じた心の不調に対して、体重を犠牲にして全てを解決する特効薬であること。人類は食事を超える薬を作れなかった現実が見えてきます。
ああ、やだやだ。恐いものを見た。気を楽にするのに、何を食べようか……
なんて言っちゃダメですよ!
いや、いいのか? 痩躯のみが正しいという価値観の押しつけはよくないと語られますし、食事で解決していいのかな?
「こっちがいいのだ」と言い切って楽しむか、道を選べず悩むのか、迷うのも一興です。
『肥満禁止法』が導入された、少し未来の日本。
太りすぎはよくないということで、BMIが高い人はダイエット合宿に強制参加させられ、痩せなければいけないという独特な世界観の本作。
肥満体型の男女数人が連れてこられたのは、矯正島と呼ばれる島で、合宿が終わるまで迎えの船は来ない。
こうして、脱出不可能なダイエットが始まりました。
集められた人たちが島に閉じ込められて出られないなんて、ミステリーものであるようなシチュエーション。
そう思って読み進めていたら……やっぱり事件が起きましたよ!
そうですよね。脱出不可能な島に閉じ込められて、何事もなく終わるはずありませんね。
ダイエットに来たはずなのに、強制的に始まった恐怖のサバイバル。
太ってたせいでとんでもない事件に巻き込まれるなんて、あんまりじゃないですか!?
無人島で起こるハラハラサスペンス。
肥満が原因で連れてこられた合宿参加者が、精神的にまいって激やせしないか、心配になりました。
みなさん、体重って気にされていますか? 太りすぎは体によくないってこと、もちろん知っていますよね。
本作は、BMI30以上の肥満と判断された人たちがとある島での合宿によって痩せるというお話。
と言っても、ダイエットする当人たちは、自ら望んで参加するわけではありません。というのもこのダイエット合宿、肥満禁止法という法律の下、強制的に行われるのです。
いやいや、いくら太り過ぎはよくないからって、無理やり島に連れていかれてダイエット合宿なんて無茶だよ。こっちには普段の生活だってあるんだよ。なんて文句は、お上には通用しません。どれだけ不満があっても拒否することは許されないのです。
そうして島に集められた参加者たちは、それぞれ体重を落とすため、ダイエットを開始する。はたしてみんなは痩せることができるのか。
……なんて、ここまで読んだら、ダイエットの話と思うことでしょう。もちろんそれも間違ってはいません。そういう一面だってもちろんあります。
ただね、本作のジャンルはホラーなのです。
と言っても、島にオバケが出るとかではありません。本人の意思を無視して連れてこられての、過酷なダイエット。これに不満を漏らすものがいるというのは既に書いた通りですが、その不満がついに爆発。
怒りと歪んだ心は、とんでもない凶行へと駆り立ててしまうのです。
それから始まるのは、過酷なダイエット合宿の方がまだマシだったと思える生死をかけたサバイバル。
体重どころか、命を落としてしまうのではないか。極限状態でのドラマが始まります。
肥満防止法を設定したのは民慧党。この党の名を聞いて、別の物語を連想したあなた、すでに無雲マジックに侵されています。
そう、あの悪名高き、大豆生田賢治内閣の民慧党です。昨年のカクコン9で最熱狂賞を獲得した『老害対策法』を制定した党です。
今年もやってくれました。
その法案は『肥満防止法』
BMI30以上で健康状態に大きな問題がない人間は強制的に無人島でのダイエット合宿に参加する事になるんです。
いや、結構したいかも、その合宿。
そして、密室となった無人島で起きる殺人事件。
え、ダイエットじゃないの。ミステリーなの?
そうです、この作品はダイエットに名を借りたミステリー作品。あいかわらず著者のアイディアが光ります。
どうぞお読みください。スラスラと読める、キャラの立った群像劇は、とても面白い作品だと思います。
(個人的には最近公開された話での、たぬきの置物、ツボでした)
時の総理が打ち出した『肥満禁止法』により、選ばれし肥満体の人々がダイエット合宿に強制参加させられる?!
センセーショナルに幕開けする、ヒトコワ系パニックホラーです。
一見すると突拍子もない舞台設定なのですが、参加者たちの人間模様が、物語に確かなリアリティを与えています。
ひとくちに「肥満」と言っても、太った理由は千差万別。そこにメンバーそれぞれの人生が見えてくるのです。
こうした特殊な閉鎖環境下では、さまざまなものが生まれます。
恋とか。友情とか。
殺人鬼とか。
そう、殺人鬼が生まれてしまうんです。
通信も制限された無人島で。物資を運んでくる船の到着は数日後で。
政府公認のダイエット合宿は、絵に描いたような地獄のクローズドサークルに早変わり。
脅かされる身の安全。ささくれ立つ精神状態。絶えず変化するメンバー間の関係性。
恐怖と疑心暗鬼は、更なる悲劇を呼び……?
ページをめくるたび、何が起きるか分からない。
さあ、あなたも、この阿鼻叫喚の合宿の行く末を見届けませんか?
昨年、大変にセンセーショナルなホラー『老害対策法』で話題をさらいまくった無雲律人さんの新作は、『肥満禁止法』!
えっ?肥満って禁止されるもの?!
好きに太らせろよ、その辺は自己責任だろ?
そう思われたかもしれませんが、ちょっと考えてみてほしいのです。
まぁ単純に考えてですよ。肥満ってシンプルに不健康なんですよね。
いや、いますよ?肥満体でもなぜかめっちゃ健康な人って。そりゃ数値的には色々ヤバくてもなんだかんだと長生きしたりして。それにほら、ある程度年を取るとね、ガリガリよりはふっくらしてた方が良かったりするの。それは確かにそう。
ですが、大半の方は不健康なのです。例えば病気とかね、投薬とかでどうしようもない人もいますけど、本当に好き勝手美味しいものを食べまくって不摂生な生活をした結果の肥満だとして、その人にかかる医療費ってどこから捻出されるの?とかね、うっすら考えちゃうわけです。この辺は昨年の『老害対策法』にも通じるやつだと思うんですよね。は?あの老害の年金、俺らの税金なんだが?みたいな。
というわけでこの度の政府も過激な政策に踏み切ります。
BMI30超えたら強制的にダイエット合宿にぶち込むわ、って。
でもどうでしょう。
ほんの少し。
ほんとにほんの少しですけど、こんな環境に置かれたらさすがに私も痩せられるかも。自分を変えるいいきっかけになるかも、なんて思ったりしません?だって痩せないと帰れないわけだし。一緒に参加した人にも迷惑かかるし。
ですが、いいですか。
これはホラー。
タグを見てください。
おお、こわやこわや。
恐ろしい言葉が紛れてますね。
はてさて、落とすのは脂肪か命か、ってなもんですよ。
登場人物は多いですが、それぞれにドラマがあるので気付けばすんなり頭に入りますのでご安心ください!
さぁ、皆さんもポテチとコーラを用意してどうぞ!
民慧党の道祖土総理は「肥満禁止法」を発布し、二年の周知期間を経て施行されました。
大きな無人島での強制ダイエット合宿に参加させられた男女は、悪態をつきながらも地道にダイエットに励んでいる……はずでした。
しかし、参加者のひとりが食事当番になった際、事件は起こります。
クローズドサークルで凶悪犯の襲撃に怯えなければならない他の参加者たち。
本土との連絡に使う通信機も壊され、スマートフォンは当然圏外。
現在、物語は進み、物語中の明日には本土へ帰る船がやってくる。
それまでに凶悪犯を見つけ出せるのか。
また誰かが犠牲となるのか。
物語のサスペンスが高まっていきます。
タイムリミットがあるとはいえ、そこまで穏便に待ってはくれないだろう。
ここからぐんと面白くなりますので、ぜひ今からでもご一読してくださいませ。
政府が打ち出した『肥満禁止法』
強制的にダイエット合宿に参加させられたメンバーの中に恐ろしい人物がいたことで、悲劇が始まる──。
自分の家だと、つい食べてしまうし運動する気になれない。ダイエット合宿があるなら参加したい。
そう考える人は多いと思いますが、メンバーは重要です!!
合宿に参加するメンバーで、士気が上がって痩せられるか、殺人事件が起こって恐怖に陥るか決まります。
たかがダイエット合宿で殺人なんて、そんな……と思う人もいるかもしれませんが、他人の頭の中にあるものなどわかりませんからね。
この作品では、大嶺という反抗的な人間が問題を起こします。
彼は常軌を逸しているので、まともな思考回路でないことはたしか。
だって、あんなことをしちゃうんだもの……他人の作った料理が食べられなくなりそう。
まずは設定の面白さを味わってください。それから徐々に不調和音が鳴り響き、ホラーが幕を開けるのをお楽しみください。(ホラーが幕を開けたエピソードまでの感想です。幕が開けた後、どうなるんだろう? 大嶺の闇の深さに震えながら読み進めたいと思います)
バラエティ番組のダイエット特集や、ダイエット合宿の特番をついつい見てしまう方は少なくないはず。
ハイカロリーな食事を続けてしまったボディに鞭を打ち、地道な食事制限や運動を続ける姿は応援したくなるのですよね。
本作はBMI三十以上の人を国が強制でダイエット合宿に参加させるという、とんでもない法律がある世界。自分から変わりたいと思ってダイエットをする訳ではないので、合宿のメンバーに選ばれてしまった人は不満を抱えていました。
特に集合場所に一人だけ来ようとせず、母親から甘やかされて育った引きこもり中年男性・大嶺の不満たるや!
仲間と励まし合いながら減量をする雰囲気ではない彼が、どんな波乱を生み出すのか。読み始めていくと、だんだん痩せられそうになってくるかも?