脂肪でカモフラージュされた息詰まる心理戦

最初は、ダイエットの話だと紹介されました。作中の人物にも、読者にも。

しかし本作はホラーです。次第に変質します。

露わになるのは各人の身体ではなく心の内。

人の心は重いです。体重よりも重いです。体重がちょっと増えて「肥満だ!」と非難されたくらいでは関係は逆転しませんでした。

読み進めるほど心理戦に息が詰まります。もう運動や食事制限は頭の中から消えて、登場人物の容姿も忘れるほどに。

そして重要な裏のテーマを含んでいます。食事は、脳神経の病気ではなく人間関係のストレスから生じた心の不調に対して、体重を犠牲にして全てを解決する特効薬であること。人類は食事を超える薬を作れなかった現実が見えてきます。

ああ、やだやだ。恐いものを見た。気を楽にするのに、何を食べようか……
なんて言っちゃダメですよ!

いや、いいのか? 痩躯のみが正しいという価値観の押しつけはよくないと語られますし、食事で解決していいのかな?

「こっちがいいのだ」と言い切って楽しむか、道を選べず悩むのか、迷うのも一興です。

その他のおすすめレビュー

村乃枯草さんの他のおすすめレビュー272