価値観の押し付けと性善説で成り立つダイエット合宿に悪意をひとつまみ

肥満の人間はダイエット合宿への参加を強制される。そんなディストピア的な世界で起こるサスペンス、ロマンス、人間ドラマ。

 個人的な感想で失礼します。

 飢えて、食べる。生き物がその生命を維持するために絶対的に必要なものです。身体的な飢えはもちろん、精神的な飢えというものも存在して、食事では本来解決されないはずの満たされない感覚を、食べることによって満たそうとする場合もあります。
 合宿に集められた人間たちには、それぞれ今までの人生や、肥満体型になるに至った経緯があって、理不尽なものも含めて様々な満たされなさを抱えているのだと思いました。
 その飢餓が極限に達すると、誰しもが獣のように牙を剥く可能性があるのかもしれません。生きるために。

 悪だ罪だと強制的に集められた登場人物たちですが、合宿を終わらせるため、変わるきっかけを掴むため、それぞれダイエットを頑張っていたと思います。
 荷物検査も包丁から遠ざけられることもない合宿は、人の善性、社会の「肥満は悪」という意識、そして参加者たちの「痩せなきゃ」という意識の上に成り立つものだったのではないでしょうか。そこに悪意が混ざればどうなるか……。
 合宿という同じ時を過ごしながらも、違った運命へと向かっていく人間たちを描いた、群像劇でもあると感じました。

 未来ちゃんがほわほわしてて可愛くて癒されました。
 クローズドサークルであったり、ラブコメであったり。とても面白く読ませていただきました。「エピソード:0」のインパクト、すごかったです。
 完結おめでとうございます!

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