推しに爆走する美少女と彼女に翻弄される俺。二人の間には執筆活動があった

部室で寝ていた与村の元に、ある日突然、美少女が押しかけてくる。小説投稿サイトの使い方を教えてほしいと頼まれ、二人の腐れ縁はスタートするのだが、彼女は熱狂的なドルオタだった。与村は彼女の可愛さに、推し活に、そして作家としての素質に翻弄されていく。

 オタクの生体的な描写に笑ってしまいました。そこに与村の分析や受け答えが加わると、絶妙な言葉選びも相まって、さらに面白さが込み上げてきました!
 藍島の推し活やライブの様子等は、程度の差こそあれ似た経験のある人ならば、共感できたり思い当たったりするものがあると思います。
 また、こちらの作品には小説の書き手と読み手が登場するため、それぞれの思いについても共感することができました。特に(作家活動に限らず)「前々から頑張っていたことを、後からやり始めた人に簡単に追い抜かれる」経験をしたことのある方には、痛みを伴って刺さるものがあると思います。
 屈折した想いを抱える与村のことは応援したくなりました。自分の創作に対して努力しているし、藍島に何だかんだ付き合って、共感の言葉を述べる彼は良いやつだと思います。与村と古賀の関係もすごく良いです!

 藍島がアイドルを推して全力で行動していくのも、与村が藍島に様々な感情を向けたり、後を追ってがむしゃらに書いたりするのも、自分にとっての世界一の思いを捧げる行為なのではないかな、と個人的に思いました。
 あともうひとつ個人的に、作品を通して作者様の博識さが感じられて、そこも好きでした。

 ささやかな輝きがありつつも、しっかりとほろ苦い作品。最後まで目が離せません!

※「第25話 新刊発売日」までを読んでのレビューです。