概要
二人の乙女に振り回されつつ、祥三郎は日露戦争へと身を投じる。
♪♪♪
・祥三郎:大日本帝国海軍軍楽隊軍楽師、フルート担当。
・エデル:戦闘中に戦艦の上まで祥三郎を助けに来る。戦うのが大の得意。
・晴子さん:祥三郎が帰る度に先回りして会いに来る。未来が少し分かる。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!あまりにも強く、素敵すぎる二人の乙女
まさかの日露戦争を舞台にした作品で、正直読む前は戦争舞台……しかも日露戦争とか陸軍苦戦しまくりで地獄やんけ……と戦々恐々としていました!!すみません!!
しかし実際読んでみるとそういった警戒部分はたしかにあるものの、そういった戦争の暗さや過酷さを吹っ飛ばすほどの強さと輝きを持ったヒロインの存在によって解消されていました。
本作の魅力は、過酷なこの時代を強く美しく生きるヒロイン達の魅力に詰め込まれています。
主人公である祥三郎も難しい立場ではあるものの決して軟弱な主人公ではなく、むしろ彼女らに攻囲を向けられるに足る人物であることは作中でなんども丁寧に描かれていて好感が持てました。
総じて…続きを読む - ★★★ Excellent!!!その音楽は戦場を駆けるように響く
時は明治。日露戦争の頃。この物語は軍楽師でフルートを担当する祥三郎が主人公の物語だ。
留学先のベルリンで恋に落ちた彼は必ず戻ると約束して日本に帰国する。しかし、日本では婚約を破棄したはずの婚約者が彼の帰りを待ち構えていた。
この時代において家の結びつきを伴う婚姻は思っている以上に強固なものだ。
否、と言って簡単に破棄出来るようなものではないうえに婚約者の晴子が魅力的な程に強い。併せて祥三郎の心根があまりにも優しい為になかなか婚約破棄まで進めないのである。
薩摩隼人の軍人家系の家で育った優しい主人公は相当に生きづらかっただろうと思う。そんな彼の拠り所が音楽であった。
作中で紡がれる音楽は雄々し…続きを読む - ★★★ Excellent!!!「こうあるべき」の時代に、戦争と音楽と
明治・大正の時代は華やかであるように見えて、刻々と戦争へと向かう時代であった。そして今以上に「あるべき」という姿が口にされる時代でもあったように思う。
殊に、男は、女は。家は。そんなしがらみの時代でもあるように思う。主人公はそれこそ九州の人間であるので、勇ましくあることが求められる。
けれど彼は、求められるような武人ではなく、音楽と平和を愛する青年であった。
ワルキューレの騎行の、ヴァイオリンとチェロが聞こえる。おそらくこの曲はタイトルを知らずとも、耳にしたことのある音楽だろう。
「彼女」が戦場に姿を見せると、それが鳴り響くようでもある。
この作品は戦争や愛を描き、そして中心には音楽がある…続きを読む - ★★★ Excellent!!!戦争に向かう世界の中で、平和を愛する青年が音楽を奏で続ける物語
最近世間では明治大正風の和風ファンタジーが流行っていますが、こちらの作品も明治時代が舞台となっております。けれど、こちらは、華やかからは程遠い、戦争をテーマとした物語。富国強兵を目指す大日本帝国の姿の一側面を、克明に描き出しています。
といっても、がちがちのハードな戦記作品でもありません。なぜなら、主人公が、平和を愛し音楽を愛する青年だからです。彼はフルートを吹くことを通じて戦うことのむなしさを考え続けています。しかも、彼、実は鹿児島出身でネットミームで有名な薩摩隼人の家系の人間で、家族には武人として強く猛々しくあることを求められているのですが、彼は絶対に戦わないのです。ただただ音楽を愛し、…続きを読む - ★★★ Excellent!!!フルート、戦争、三角関係
フルート(楽器)と(日露)戦争と三角関係。どう考えても結びつかないこれらのワードが、本作では立派な恋愛歴史モノの構成要素になっています。
まず構成。軍楽隊の隊員として海軍に入った主人公・祥三郎は、音楽を学ぶためドイツに留学していますが、日露関係緊迫のため祖国に呼び戻されます。本作は、過去パートである「ドイツ留学時代」「留学前後の実家の状況」と、現在パートである「日露戦争開戦後の状況」を交互に描くという構成を取っていますが、これによって祥三郎というキャラクターの性格・抱えるしがらみ・そして夢が、徐々に明らかになっていきます。
そしてディティール。本作の作者・白里りこ氏はクラシック音楽に造…続きを読む - ★★★ Excellent!!!人生にも歴史にも、音楽は常に共に。戦争、恋愛、神話も絡むファンタジー
日本海軍軍楽隊のフルート奏者である祥三郎は、命令により留学先から即刻帰国することになった。一生を添い遂げるつもりであった"彼女"と「必ず生きてベルリンに戻って来る」という約束をした祥三郎だったが、日本では婚約を断ったはずの晴子が「婚約はまだ続いている」と四年間ずっと彼の帰りを待っていたのだった。そんな板挟み状態のまま、祥三郎は戦場へと向かうことになる。
エデルがカッコ良くて、登場してすぐに好きになりました! 晴子も一途で、かといって祥三郎の意思を無視して自分勝手に乱暴に迫ってくるわけではなく好感を持ちましたし、祥三郎も家族から蔑まれ辛い思いをしつつも自分の好きなものに向かっていける真っ直ぐ…続きを読む