千崎 翔鶴

硝子というのは透き通って美しく、光を通せばキラキラと輝く。 けれど硝子を通して景色を見れば、その景色は歪んで見えたりするものです。 そんなことをふと、読了後に思ったものでした。 …続きを読む

時代の変遷というのは、価値観を変える。日本は昭和から平成、戦争や経済成長の中で激動とも呼べる時代を送った。 その中にあって自分を縛り付ける価値観から逃れきれなかった男と、その男にず…続きを読む

「毒」というものは、必ずしも目に見えるかたちをしているとは限らない。 かつて人に言われたことば、生い立ちによって作られたもの、気付かぬうちに己を縛るもの、そういうものもまた、「毒」…続きを読む

さて、赤ちゃんむにむに師とは何か。 目の前に赤ちゃんがいて、まず何に目を奪われるかといえば、そのむにっとぷるんとしたほっぺやむちむちむにむにの手足ではないだろうが。 だがしかし。…続きを読む

まずは主役のふたりである。作品紹介を見ていただいてもわかる通り、なんとも正反対というべきか、だからこそ最高というべきか。 けれど正反対ゆえに、このふたりは最高のバディとなっていくの…続きを読む

ホタテ漁というものを知るはずもなく、正直海も遠いところにいるために、「え、ほんとに？」と思うことが詰まっている。 人生いろいろなのだが、まさか漁に出るというのはなかなかない。 塾の…続きを読む

冒頭から寝起きの悪さで婚約破棄をされ、しかも投獄されるというなかなかの始まり。 けれど思うのだ。「どうしてこうなった？」と。 実はこの婚約破棄には、仕組んだ犯人がいたのです。 さ…続きを読む

この作品を一言で表すのならば、やはり「王道」となるのだろう。 ファンタジーのみならず、物語には王道とされる筋が存在する。それがなぜ過去から現在に至るまで王道と呼ばれるかと言えば、多…続きを読む

アイドルとはなにかと、ふと考えた。アイドルとは夢を売る、夢を見せる、そういうものなのだろう。 そしてそれに魅せられたのが、ファンなのかもしれない。 夢は近くにあるようで、けれども手…続きを読む

あい。 さて、このことばにどのような漢字を当てはめよう。この文字を見て、あなたはどのような漢字を思い浮かべるだろうか。 この作品には、様々な「あい」が詰まっている。 人の感情とい…続きを読む

ある男のところに、娘を名乗る少女が現れる。 彼女は本当の娘であるのか。彼女は何者か。そして、何を秘めているのか。 人間のホラーであり、そして怪異のホラーであるようにも思う。 そし…続きを読む

刀剣とは、道具である。人が握るものである。 その距離は手に触れるものであるのだから近く、けれど人と刀剣とは存在としてひどく遠い。 たとえその刀剣が人の形を取ったとしても、本来ならば…続きを読む

現実であろうと異世界であろうと、探偵のすることはきっと変わらない。 そこに事件があり、謎がある限り、探偵はそれを解決するために動くのだ。 もちろん世界が異なれば、使えるものは違って…続きを読む

はてさて、どう転ぶのか、この恋模様。なんだかどちらも色々とありそうで……。 太陽のようなエマは、果たしてどちらを選ぶのか。 好きな子に意地悪をするというのはままあること。ですがそ…続きを読む

ナルフェック王国で起きる、四つの恋の物語。 身分であるとか、過去であるとか、そういうものは当然ながら人それぞれで、恋模様はどれひとつとして同じものにはならないのである。 けれど、ど…続きを読む

化粧をする。 では、なんのためにするのだろう。 自分の醜さを隠したいからか、なりたい自分になるためか。 隠して、隠して。隠し続けた先に、きっと納得はないのだろうとも思う。 それな…続きを読む

大切な友人から、綺麗なポストカードが届く。 そこには忙しいのか、必ず走り書きの一言が添えられる。 そのポストカードに秘されたものを一言で形容するのは難しい。 これを、何と呼べばいい…続きを読む

誰かに言われるがままに、誰かの言いなりに、そうして生きてきた。そんな風に思えてならない主人公ウルリーケと、傷つき続けてきたスヴェンとか出会い、そして彼らの時間は動き始める。 それま…続きを読む

さらさらと水は流れていく。この流れは、濁りのない清い水だ。 それほどに美しい描写にて描かれるのは、狭間で揺れるひとりの心。 溶けてしまうことを選ぶのか、濁りある人の世を選ぶのか。 …続きを読む

この世界は灼かれる運命にある、誰もそれを知らずとも。ただ、その運命に繋がれた紅の乙女だけが知っているのだとしても。 紅の乙女として目覚めたフィアルは、どこかその宿命と「フィアル」と…続きを読む

己霊というものがある。それと縁を結ぶことで、己を確立させるものがある。 本来ならば混ざり合い溶け合うはずであったものは、別々に在ってしまった。ならばその状態を何と呼ぼうか。 選ばれ…続きを読む

とにかく温かく、やさしく、そしてかわいい！ そんな物語です。登場人物たちがお互いのことを考えて思い合い、そうして紡がれていく物語は、どこかふんわりと包み込むような空気すら漂ってい…続きを読む

まにまに王國という場所がある。その王族は少しばかりかわった「しきたり」があるのだ。 そしてこの物語はその「しきたり」――お見合いに人が集うところから始まっていく。 さて、この集った…続きを読む

精霊や魔獣の存在する世界に生きる双子のうち、兄が行方不明となった。そして妹は男装し、無謀にも兄が所属していた騎士団へ。 それがすべての始まりであり、そして終止符を打つための一歩でも…続きを読む

パペットを手にした少女と、ぬいぐるみをつれた少年と。そんな可愛らしい、ソフトな2匹のいるミステリである。 ミステリであるが、同時にこれは青春の群像劇でもある。 彼らは変わり者。けれ…続きを読む

一人の美しい少年が現れるところから、物語は始まる。 さて、彼は何者であるのか、どのような人物であるのか。 そして、彼に何があったのか。 ここで多くを語ることはしたくない。 ただ彼…続きを読む

鬼の姫様が婿探しに従者を連れて出て漂流、結果として従者と結婚しましたとさ。 と、話はそこからなのである。 色々あって領主代理とその夫人となるわけだが、その土地がまた問題を抱えていた…続きを読む

兄が自殺などするはずがない。 そう信じる弟は、兄の足跡を辿るようにして真実を探し求める。 そうして見えてくるものは、他にも……というように、二重三重に伏せられた謎のあるミステリであ…続きを読む

探偵事務所に押しかけていた井波田君に、ようやく雑務ではない仕事が与えられた。 それが潜入、そうして彼は転校をして、謎を解くことになるのだ。 聞き込みをするうちに、事件はもうひとつ姿…続きを読む

子爵令嬢であるルエラは、公爵であるドニに求婚される。しかもそれは、三年間という期限付きの契約結婚。 どうしてそんなことを、となるわけだが、彼らは互いに抱えている秘密があるのだ。 …続きを読む

この作品を何と言おう。何と形容しよう。 この作品を読んで思うことは、きっと千差万別で、受け取る人間によって受け止め方も変わるのだろう。 きっとそのどれもが正しくて、そのどれもが大切…続きを読む

あなたは夜に夢を見るだろうか。 一晩でいくつ夢の世界を旅するだろうか。 では、夢とは何だろう。 これは、一晩で見たいくつもの夢である。 それぞれの夢は、何を伝えようとしているのか…続きを読む

強欲令嬢というレッテルを貼られ、そして嫁ぐ。 この結婚の契約は「白い結婚」であること。 その上で心が動いてどんどん自分らしくなっていくヒロインが、とにかく魅力的でした。 蛇とカエ…続きを読む

裏方に徹してきた令嬢が求婚され、そして結婚する。 でもどうやら、この王子様には何かがある様子。 果たして彼の語った理由も真実かどうか？ そんなドキドキする導入から、山あり谷あり。…続きを読む

斜に構えたように、ある意味で「らしい」クラスメイトを見る僕と、そして少し特別なクラスメイト。 夏の青空、青い春。 己の心はままらないもので、その感情が何であるのかは、きっと自分でも…続きを読む

これは、多くの人が直面したものである。
さらりとした時事ネタである。

ある日突然姿を消し、名前も変わり。
貴方のスマホの中には、まだ生存していますか？

レビュータイトルに「喪失」と書いたが、それだけではない。 冬が起きますように、このタイトルに込められた意味が分かるだろうか。 とかく丁寧な描写の中、冬がそこにないのに冬が見える。そ…続きを読む

昔ながらの因習が残る地で、盲目故に少女は生贄に選ばれる。 決して明るい始まりとは言えない嫁入りではある。そこには人の業も絡み、情景描写と相まっていっそおどろおどろしさすらも感じるほ…続きを読む

異能を失った主人公の嘆きに呼応し、その存在は現れた。いとこにも両親にも散々な扱いを受けた不憫な彼女の前に現れたのは祟り神――けれど、それは美しく、そして主人公だけを愛してくれる。 …続きを読む

熊の引き起こした事件といえば、いくつか思い浮かぶものがある(悲惨かつグロいので苦手な人は決して調べないで欲しい)。 熊への復讐を誓った少女の決意は、正しいのか、それとも。 真っ白…続きを読む

情景、心情、そして愛。何を取ってもまず「美しい」のがこの作品の魅力だろう。 凛々しい女主人公と美しい王子、そして周囲の仲間たちもまた魅力的で、ぐいぐいと物語の中に引っ張りこんでくれ…続きを読む

美しい文章で彩られた、けれどふわりと核心を掴ませずにすり抜けていくような、切なくて苦しいような。 読み終えて、「ああ」と一言が出てくるような。 嘘というものがある。 口から出た言…続きを読む

好き、という気持ちは様々ある。それこそ恋愛の「好き」であったとしても、その方向性が必ずしもふたり同じとは限らない。 多感な時期の少女ふたりは確かに「好き」をお互い抱えて向き合って、…続きを読む

第３の性というものがある世界で、支配されたい願望と支配したい願望とを持つ少女たち。 ある種異常とも思えるそれは、第３の性によるものなのか、それとも生来持っている気質なのか、どちらな…続きを読む

月が綺麗ですねという言葉がある。さあ、この言葉をどう説明しようか。 舞台はとある田舎町。どこか周囲になじめない女性が出会うのは、絵描きの青年。 田舎の空気が漂うと言えば良いのだろ…続きを読む

まずこの独特の設定が面白い。 そもそも夢の中でパーティを組んでいた仲間がいるという大前提の下、その魂の解放を目指していくのである。 まずはこの設定を読み込んでおいて欲しい。 そこ…続きを読む

アイドルとはきっと、見ている人に笑顔を与える存在なのだろう。 駆け出しアイドルがファンに刺されて異世界転生、アイドルらしさで社交を変える！ と、一言で言えばこういった物語なのかもし…続きを読む