主人公の舞は、殺害衝動を抱えています。
してはいけないことだと頭では理解していても、その衝動は身体を突き動かそうとするほど。
代替のものの命を奪うことで何とか止めてはいたものの、舞に瓜二つの少女、雪蝶が現れてから一変します。
〈高位の存在〉
自由に命を奪えてしまう存在であり、試練を乗り越えれば舞もそうなれると提案されたのです。
この提案は、衝動に悩む舞にとって蜘蛛の糸のようだったのでしょう。
けれど、それは絶望への入り口でした。
一つ、また一つと与えられた試練をこなしていくうちに、舞の心は壊れていきます。
やがて、その試練の対象は──。
心理描写がきめ細やかで、舞の葛藤などが痛いほどに伝わってきます。
はたして、どのような最後を迎えるのか。続きがとても楽しみです。
皆様もぜひ、読んでみてください。
誰もが完璧だと賞賛する舞には、秘密がある。
それは本人にもどうしようもない、殺人衝動だった。
自身が異常者であることを理解し、己の本質を隠し続ける舞。
自分の衝動は汚れていると考える舞は、だからこそ綺麗なものが、同じクラスの雫莉が好きだった。
そして舞にとって、特別な人がもう一人いる。
唯一、自分の本性を知る夏野先生だ。
献身的に彼女を受け入れる夏野先生に、安らぎを覚える舞。
そんな狂気と正気の中で、彼女の目に赤黒い蝶が現れた。
舞が追いかけると、そこには、自分とそっくりな女の子がいた。
「雪蝶(ゆきちょう)」と名乗る少女は、自分が「誰のことでも自由に殺すことができる」〈高位の存在〉であるといい、舞にある提案をする……。
「私は、舞を愛しているんです。私はあなたの絶対的な味方ですよ」
人間として生きられないなら、人間を辞めよう。
そう決意する舞だが、雫莉と別れたくないとも思ってしまう。
気が狂いそうなほど相反する気持ちの中で、舞は雪蝶と赤黒い蝶に誘われていく。
そして少しずつ歪んでいく彼女の日常。舞に与えられた愛は、そして舞の愛は、はたしてどこへ向かっていくのか。
序盤からとにかく、「何かすごいことが始まりそう」という雰囲気いっぱいの作品です。
一言で言えば、『オーラがある』と表現するのが正しいでしょう。
主人公である舞。彼女はある抗いがたい『業』を内に秘めていた。
生き物を殺すことが楽しくてならない。その瞬間にだけ心が激しく満たされ、まずいことだと思いつつも激しい衝動に駆られてしまう。そうして時折小さな虫を殺すなどして、どうにか自分自身の衝動に折り合いをつけていた。
そんな彼女の前に、ある時『一人の少女』が姿を現す。雪蝶と名乗る彼女は、無数の赤黒い蝶の群れと共に姿を見せると、舞に対して「これから試験をする」と口にする。
その試験に合格すれば、舞はこの世の理を越えた上位の存在に変われるという。生き物の命を自在に奪ったり戻したりできる雪蝶の力を見て、舞は試験を受けると決める。
そして、その試験とは……。
生き物を殺したいという衝動に抗えない、異端の精神を持つ舞。その彼女に対し、『殺す』ことを義務づけるような試練を課す雪蝶。
この先には、既存の倫理や常識を踏み越えた『更なる異端』の道が待っていることでしょう。
世の理から外れ続け、人ならざる道へと突き進んでいく舞。この先、彼女にはどんな運命が待っているのか。
序盤からの舞の持つ異端な感じが丁寧に描写されているため、そこに秘められているポテンシャルがひしひし伝わってくる作品です。彼女たちは最終的にどこへと導かれ、どんな光景を見せてくれるのか。
強い個性と可能性に満ちた作品です。