概要
普通になりたいと願いながら、日に日に増していく衝動に苦しむ日々。
そんな舞の前にある日、舞と瓜二つの少女――雪蝶(ゆきちょう)が現れる。
「貴女が、幸せになれる道標を示しに訪れたのですよ」
雪蝶の提案を救済のように感じ、受け入れる舞。
しかしそれは、最悪の絶望への入り口だった――
*・*・
前編「Despair」と後編「Hope」によって紡がれる、約100,000字の物語。
極上の絶望と希望を、あなたに。
*「カクヨムコンテスト10(ホラー部門)」への応募作品です。全47話、毎日更新されます。
*残酷描写(流血等)を多く含みます。また、この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!「温度」があって、どうしようもないほどにきれいで……
「温度がある」というと、「あたたかさ」をイメージされることが多いかもしれません。
ですが、この物語にはそれだけではない「温度」があります。
抱きしめられるあたたかさも、
やけどするくらいのあつさも、
肌に張り付くような蒸しあつさも、
ぞっとするようなすずしさも、
痛いほどのつめたさも……。
この物語には、確かに、温度があります。
さらに、面白いほど感情が掻き乱されます。
決して嫌なものではないそれは、この物語がどうしようもないほどにきれいだからなのでしょう。
苦しさも辛さも終わりが見えないほどにある中、鋭く光る希望は、たとえるなら、北の空でじっと孤独に光る北極星でしょうか。
ホラー…続きを読む - ★★★ Excellent!!!苦しみ、衝動――そして、愛
まず何よりも、この二幕構成の妙を讃えたい。前半が終わり後半となり、最初はがらりと話が変わったかのように思える。
けれど、そうではないのだ。読み進めていくごとにパズルのピースがはまっていくようで、そして最後のひとつがかちりとはまった時に、この物語の本当の姿が見える。
ああ、そういうことだったのか。そんな風に思って本を閉じるという瞬間は、何物にも代えがたい。
これはホラーだ。言うなれば、非常に美しい人間のサイコホラーと言おうか。
苦しみを抱え、衝動とも戦い、現実は歪み。そこの、彼女らはいる。
これは、彼女による、彼女たちのための物語なのだ。
さて、では。途方もなく愚かなのは、途方もなく美しいの…続きを読む - ★★★ Excellent!!!愛と異常性の狭間で揺れる振り子は、救いと絶望、どちらに揺れる?
殺害衝動に悩み、普通の人間になりたいと望む、龍ヶ世舞。
それは、社会性のある人間として、両親や同級生の雫莉など親しい人たちと「本心」から接したいという願いの裏返しでもあります。
そんなある時、〈高位の存在〉という生物の命に干渉することができる雪蝶と出会う。
試練を乗り越えさえすれば、自分と同じ〈高位の存在〉になれるという甘美な誘いを受けて、舞は試練に挑んでいきます。
その試練は舞の心を削る内容で、それでも夏野先生や雫莉など親しい人との関係性が崩れる心を慰めていきます。
それすら、絶望へと至る道筋とも知らずに……。
話は変わって、他者からの承認への欲求として、「存在の承認」と「行為の承認」…続きを読む - ★★★ Excellent!!!永遠に繰り返される痛みと愛しさ
前編と後編で大きく分かれている本作。
読み終わるとどちらが始まりでどちらが終わりか分からなくなる。
繰り返される永遠の絶望と希望を表しているようで秀逸な構成です。
前半の主人公、殺人衝動を抱えた舞。<高位の存在>である雪蝶の提案で、自らも<高位の存在>になるための試練を受けることになります。
試練の影響でどんどん精神も日常も侵されていく。
ホラージャンルらしく、堕ちていく舞をはらはらしつつ見守ることになります。
舞をそそのかす雪蝶は美しいけれど不気味で不穏。
そんな雪蝶の秘密が明かされる後編。
読み切ると、雪蝶の言葉や行動の裏の意味が分かり、読み返したくなる作品です。
確かに愛しているのにど…続きを読む - ★★★ Excellent!!!絶望と希望が織りなす切なさ
殺害衝動に悩み、苦しむ龍ヶ世舞。
彼女の前に現れたのは、自分にそっくりな雪蝶と名乗る少女だった。
雪蝶の言葉に乗せられて、舞は<高位の存在>になる道を選ぶ。
しかし、その道はあまりにも残酷だった。
本作は前編「Despair」と後編「Hope」で構成されている。
舞にとっての希望と絶望。
雪蝶にとっての絶望と希望。
ラストに近づけば近づくほどに、タイトルの切ない雰囲気を感じ取れる作品となっている。
それは残酷な設定なのに、彼女たちをどこまでも美しい、と読者に感じさせてくれるからだろう。
是非、この愛してやまない二人の物語を、最後まで読んでほしい。
そしたら、再び最初から読み返したくなる…続きを読む - ★★★ Excellent!!!甘露の味をした絶望。その果てにあるものは。
主人公の舞は、殺害衝動を抱えています。
してはいけないことだと頭では理解していても、その衝動は身体を突き動かそうとするほど。
代替のものの命を奪うことで何とか止めてはいたものの、舞に瓜二つの少女、雪蝶が現れてから一変します。
〈高位の存在〉
自由に命を奪えてしまう存在であり、試練を乗り越えれば舞もそうなれると提案されたのです。
この提案は、衝動に悩む舞にとって蜘蛛の糸のようだったのでしょう。
けれど、それは絶望への入り口でした。
一つ、また一つと与えられた試練をこなしていくうちに、舞の心は壊れていきます。
やがて、その試練の対象は──。
心理描写がきめ細やかで、舞の葛藤などが痛いほどに伝…続きを読む