そこにあるのは献身か、それともエゴか。

誰もが完璧だと賞賛する舞には、秘密がある。
それは本人にもどうしようもない、殺人衝動だった。
自身が異常者であることを理解し、己の本質を隠し続ける舞。
自分の衝動は汚れていると考える舞は、だからこそ綺麗なものが、同じクラスの雫莉が好きだった。

そして舞にとって、特別な人がもう一人いる。
唯一、自分の本性を知る夏野先生だ。
献身的に彼女を受け入れる夏野先生に、安らぎを覚える舞。

そんな狂気と正気の中で、彼女の目に赤黒い蝶が現れた。
舞が追いかけると、そこには、自分とそっくりな女の子がいた。
「雪蝶(ゆきちょう)」と名乗る少女は、自分が「誰のことでも自由に殺すことができる」〈高位の存在〉であるといい、舞にある提案をする……。

「私は、舞を愛しているんです。私はあなたの絶対的な味方ですよ」

人間として生きられないなら、人間を辞めよう。
そう決意する舞だが、雫莉と別れたくないとも思ってしまう。
気が狂いそうなほど相反する気持ちの中で、舞は雪蝶と赤黒い蝶に誘われていく。
そして少しずつ歪んでいく彼女の日常。舞に与えられた愛は、そして舞の愛は、はたしてどこへ向かっていくのか。

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