間章一

04

 悪食に「どんな武器がいい?」と聞かれた。

 雪は「人を殺せるものなら何でも」と答えた。


 ◇


 森の中に、雪は立ち尽くしている。

 彼女の右手には片手剣が握られていた。銀色の刃は木漏れ日を反射してきらきらと輝いている。雪は片手剣をそっと見つめてから、前方に立っている少女を見た。

 肩上ほどの長さの、焦茶色の癖毛を持つ少女だった。


 彼女は両手剣を握っている。まだ少しも戦っていないのに、はあ、はあと呼吸を荒くしていた。雪は冷めた視線をしながら、少女へと近付いていく。

 まあ勝てそうだな、と雪は思った。身長も自分の方が高いし、何より少女は既に調子が悪そうだ。恐らく殺し合いという概念に強いプレッシャーを感じているのだろうと、雪は歩きながら考える。

 後十歩ほど歩けば少女の間合いに入るだろうという頃だった。



 ――――少女が、全身から血液を吹き出した。



 目から、鼻から、口から、遍く毛穴から――真っ赤な液体が溢れ出す。流石の雪もぎょっとして立ち止まった。少女は苦しそうに咳き込みながら、どんどん赤くなっていく。地面もどんどん赤くなっていく。どろどろ、どろどろ、どろどろ……止まることもなく、溢れ続けている。

 少女の口が、動いた。


「何…………で…………こんな、の…………や、だ…………こ、む…………」


 その言葉を最後に、真っ赤になった少女はくずおれて動かなくなる。

 雪は何も言うことなく、赤色の亡骸なきがらを見つめ続けていた。

 風に吹かれて、樹々の葉がさらさらと揺れた。

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