ときに、モキュメンタリータッチで語られていく表題の謎を追って、過去をさかのぼり、現代の渦中に身を置く主人公……
とても怖い作品でした。
どこまでがフィクションで、どこまでが現実なのかわからない、そんな怖さがあります。
謎を追いかけるのはミステリーですが、そこで起こる理不尽さはホラーそのもの……
史実として起こったことに想いを馳せると、単にフィクションとしては見れない警告のようなものも感じます。
全体の文章としては、とても読みやすい作品なのですが、語られていくストーリーにはお話として楽しんでいくだけでは許されないような緊張感があります。
戦時中の禁忌の話も入っていて、バカにできない恐ろしさがありました。
読み終えたあとで感じる、ぼーっとした虚脱感は、ケッチャムの『隣の家の少女』の結末までを読んだときに感じた感覚に似ているかもしれません。
傑作ですが、それだけに中毒性も高く、読んだひとの胸に大きな穴を空けていくような強烈な作品でした。
筆者の視点を中心に描かれる、とある言葉をめぐるホラー作品です。
発端となったのは大叔父の事故死。
遺品整理に訪れていた彼の部屋で、筆者は一冊の日記帳を見つけます。
他愛もない文章の連続でしたが、唯一、最後に記載された内容だけは支離滅裂手前の不気味な文章でした。
興味をそそられた筆者は、大きく三分割できる不明単語について調べ始めます。
しかし、時を置かずして始まったのは、不明単語を知った人々の死。
どうして大叔父はそんな単語を日記に記したのか。どうして単語を知った人間が死んでいくのか。
もはや偶然では片付けられない現象の中で、単語を知ってしまった一人である筆者はどうなってしまうのか。
ぜひ読んでみてください。