人魚姫は泡と消えるのか

幼い頃に『人魚姫』の物語を読んだことがある。恋のために海から上がった人魚姫は、けれどその恋を成就させることなく泡となって消えてしまうのだ。
そこにあったのは人魚の純粋さだったのかもしれないが、あの結末はなんとも切ないものがある。

この作品はその『人魚姫』を下敷きにしながら、互いを思うこと、人間のしがらみ、そういったことを丁寧に描いている。
エレオノーラを見守るのはもどかしくもあり、切なくもあり、けれど読み終えれば必ず「ああ、良かったな……」とそう思えるのだ。
かつて『人魚姫』を読んだ後に感じた物悲しさも、この物語は一緒に連れていってくれるのかもしれない。

彼女の愛した王子様は、何を思っていたのでしょう。
互いのためというのは確かに愛で、けれど少しくらい我儘な欲を出しても罪はないのかなと、そう思うのでした。
ぜひご一読ください。

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