うたかたの人魚姫

結月 花

うたかたの人魚姫

おとぎ話①

 むかしむかしのお話です。

 遠い遠い海の底に、人魚の王国がありました。お城には王様と六人の人魚が暮らしていました。中でも一番下の人魚姫は飛びきり美しく、思いやりのある優しい娘でした。

 人魚達は大人になると海から出て人間の世界に行くことができるようになります。人魚姫も、お姉さん達から人間の世界の話を聞き、海の外の世界へ憧れを持っていました。


 ついに大人になった人魚姫は、喜びと期待を胸に海の上へ上がっていきました。

 水面から顔を出すと、夕闇の中に大きくて立派な船がありました。たくさんの灯りがついており、綺麗な服を着た人達が歩き回っています。甲板には誰かが立っていて、海を見ていました。

 近づいてそっと見てみると、凛々しい顔をした、立派な男の人が立っていました。その人はこの国の王子様でした。王子様は日の光に煌めく水面を涼しい顔で眺めていました。


 その美しい横顔を見たとたん──人魚姫は一目で恋に落ちました。

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