千崎 翔鶴

熊の引き起こした事件といえば、いくつか思い浮かぶものがある(悲惨かつグロいので苦手な人は決して調べないで欲しい)。 熊への復讐を誓った少女の決意は、正しいのか、それとも。 真っ白…続きを読む

情景、心情、そして愛。何を取ってもまず「美しい」のがこの作品の魅力だろう。 凛々しい女主人公と美しい王子、そして周囲の仲間たちもまた魅力的で、ぐいぐいと物語の中に引っ張りこんでくれ…続きを読む

美しい文章で彩られた、けれどふわりと核心を掴ませずにすり抜けていくような、切なくて苦しいような。 読み終えて、「ああ」と一言が出てくるような。 嘘というものがある。 口から出た言…続きを読む

好き、という気持ちは様々ある。それこそ恋愛の「好き」であったとしても、その方向性が必ずしもふたり同じとは限らない。 多感な時期の少女ふたりは確かに「好き」をお互い抱えて向き合って、…続きを読む

第３の性というものがある世界で、支配されたい願望と支配したい願望とを持つ少女たち。 ある種異常とも思えるそれは、第３の性によるものなのか、それとも生来持っている気質なのか、どちらな…続きを読む

月が綺麗ですねという言葉がある。さあ、この言葉をどう説明しようか。 舞台はとある田舎町。どこか周囲になじめない女性が出会うのは、絵描きの青年。 田舎の空気が漂うと言えば良いのだろ…続きを読む

まずこの独特の設定が面白い。 そもそも夢の中でパーティを組んでいた仲間がいるという大前提の下、その魂の解放を目指していくのである。 まずはこの設定を読み込んでおいて欲しい。 そこ…続きを読む

アイドルとはきっと、見ている人に笑顔を与える存在なのだろう。 駆け出しアイドルがファンに刺されて異世界転生、アイドルらしさで社交を変える！ と、一言で言えばこういった物語なのかもし…続きを読む

人でなければ妖でもない存在がある。いや、本当はどちらでもあるのか。けれど、どちらでもあることは、どちらにもなれないとも言えよう。 ある意味狭間で揺れているような、けれどどちらにもな…続きを読む

近未来的なスポーツであっても、スポーツ物の王道は変わらない。むしろ架空であるのにリアリティあるスポーツに打ち込む、これこそ物語に許された贅沢というものだろう。 この作品は、意識のみ…続きを読む

この作品の魅力は何よりもまず、この作り込まれた重厚な世界観だろう。ここにはきちんと世界がある、生きている人々がいる。 これは作者の深い知識と、そして積み上げによる賜物であるだろう。…続きを読む

死者を演じると聞いて、何を思い浮かべるだろうか。ただ舞台の上で演じるだけならば、舞台を降りれば自分に戻る。 けれどその舞台が日常のすべてとなったとき、当人は、周囲は、どうなってしま…続きを読む

この物語は、ある2人の出会いから始まる。それだけならば単純なボーイミーツガールであったのかもしれない。 けれど、そうならない事情が1つ、そこには横たわっている。 ままならない部分で…続きを読む

悪とは誰が決めるものか。 悪と誰かが定めたものを食らい、削り、記憶も記録も残さない。それはただ殺されるよりも残酷なことであるようにも思う。 そんな悪を食らう悪食が存在する現代日本に…続きを読む

働くのは大変です。 だから、飲んでいいんです。だから、美味しいものとお酒を楽しんでいいんです。 嫌なことがあった日、飲んでさっぱりしてしまいましょう。 この作品は、そんな風に言って…続きを読む

架空戦記というジャンルがある。 この作品は見事な架空戦記と賞賛を送りたい。 異世界に現実の技術が流入。この異世界は当然ながらファンタジーである。けれどそれで決して誤魔化すようなこと…続きを読む

異世界転生というものがある。現実世界への絶望か、それとも逃避か、人々はその衝動と願いのままに異世界を信じてその命を絶つ。その衝動は、異世界病と呼ばれた。 その異世界病が、生み出した…続きを読む

学生時代というものは、長い人生の中で輝かしい一瞬のように思える。 その中で、「詩のボクシング」というステージの上で過ごす彼らの瞬間も、やはり輝いて見えるのである。 それは既に失われ…続きを読む

そこに、自分の屍が転がっている。 死亡フラグがそこにあり、お前はこうなるぞと屍が教えている。 ほかは何ひとつとしておかしなところがない日常なのに、屍があるのだ。 その「死」という未…続きを読む

想い合っていようが、愛していようが、すれ違うときはすれ違う。 夫と妻とそれぞれの側から描かれ進んでいく物語は、途中で緊張感漂う場面も、ハラハラするような場面もある。 これは一気読…続きを読む

重厚かつ濃厚な世界観、科学による裏づけがされた魔術、精緻で入り組んだ世界とそこに生きる人々。そこへ中華要素と来た。 欲しいものを全部見られるような、豪華で読み応えある作品です。 重…続きを読む

人間とはドロドロしたものを抱えているもので、そして時にそれは事件を引き起こすのである。 そんな事件を解決するのが大天狗の天さんなのだ。 今日も便利屋には依頼が舞い込む。現代社会にお…続きを読む

嫌われたくないとか。嫌がられたくないとか。そういうものは誰しも抱えているものである。 表面上をサラリと撫でて、けれど気付いたときには。 そうして出会ったのは、かつて屋上で自殺した少…続きを読む

最愛を得る。最愛となる。 これはどこまでも「人間」の物語だった。厚みのある過去を背負い、それを下ろせるはずもなく、そして複雑な心を抱えている。 イヴァンもスノウも、どちらも過酷な…続きを読む

これはある意味で、一人の男が背負ったものと向き合い、そして見つめ、考える物語なのかもしれない。 じっとりとした温度がある。ずっとずっと揺蕩っているものがある。 それが、ジーンという…続きを読む

真っ直ぐな実幸さんと、繊細な夢くんと、そんなふたりが織り成す剣と魔法の世界の物語。 このふたりの関係性を一言で表すのならば、お互いに大切な相手、とするべきだろうか。 ニコイチという…続きを読む

子供の心を作るものは何だろうか。 それは生まれ持ったものだけではなく、周囲というものもあるのだろう。 たとえば、親を殺したいほど憎んだとして。決してそれは間違っていると言えない環境…続きを読む

これは見事な怪異譚である。 そして、怪異に抗う物語でもある。 村の因習により神の元へと連れ去られた子供たちは、ある時真実を知ってしまう。 そして知ったが故に知恵でもって逃げ出すこ…続きを読む

どこかじっとりとした空気と侵食してくるような恐怖、そんなものが漂っている。 いっそ異常とも言える芸術作品のような遺体、見出せない被害者の共通点、これぞミステリという導入は見事と言う…続きを読む

小学生からの仲良しな少女二人が、学園の怪異に対峙する。これだけでもワクワクする字面ではないでしょうか。 それだけでなく、この二人はそれぞれに他には言えない秘密がある。 怪異との対…続きを読む

たすけ手にかかった一本の電話から、物語は始まる。 どこまでも前向きな兎型のリタが、気弱な少年ルシェをどのように導くのか。それがこの物語の中核だろう。 誰かに謝れること、誰かと仲良…続きを読む

物語の作者が自分の書いた物語の世界へ行く。となれば先の展開は知っているしきっとやりたい放題……だなんてそんな都合のいい話はないのです。 世界の設定から描写から、自分の書いたものに辟…続きを読む

洋の東西を問わず、歴史を調べていると「え」と驚かされることがままある。 これは世界の様々な歴史を辿る物語である。おなじみ日本の歴史もあり、諸外国のものもあり。 どこから脚色なのか…続きを読む

歌舞伎に能楽に狂言に、きっと馴染みのない方も多いと思う。数多の演目があり、そのそも見ても何を言っているのか分からない。 確かにその通りなのである。ならばこの作品を読もう、現代語に見…続きを読む

ロロと親友のシリルとは、不思議な夜間旅行へと招待されてこっそりと抜け出した。 挿絵など一枚もないのに、目の前にその幻想的な光景が広がっているような気分になれる。 星々の光、ユニコ…続きを読む

短い作品の中に、洗練された内容が込められている。 きっと誰もが一度は思ったことがあるであろう、「あの時こうしていれば」ということ。些細なことが大きく運命を分岐させることもあるのか…続きを読む

読了後にふと思う、彼の先はどうなっていくのだろう、と。うまくいこうといかなかろうと、きっと彼は何かに気付くのだろうなと、そんなことも思ったのである。 くだらないと思っていたものを実…続きを読む

言葉にしなければ伝わらないものはある。お互いを想っていても、大切にしようと思っていても、それが伝わらないことはある。 信じ続けることは難しく、もしかすると愛があったからこそすれ違っ…続きを読む

良い人。 善い人。 好い人。 「いいひと」ということばに、漢字を当ててみる。さて、ではこれのいずれなのだろう。 どこにも悪人はおらず、けれども不気味さまでも孕み。 いいひと、とは…続きを読む

船、港、そしてマジックアワー。 どこか匂い立つような描写の中にある、女性との邂逅。 幼い頃の思い出と足跡を辿るかのような物語は、どこか懐かしい景色に連れて行ってくれるかのようでもあ…続きを読む

どこまでも前向きな主人公と、それを支える周囲の人々と。 発達した科学技術とヒーローとヴィラン、その要素をこれでもかというくらいに詰め込んで、それを前向きな主人公が引っ張っていく。 …続きを読む

人類の歴史において、火というものは欠かせないものである。読み終えて、ふとそんなことを思い返していた。 とにかくこの作り込みの素晴らしさをまず称えたい。主要なキャラクターのみならず…続きを読む

水の蜂とは何か。 メインキャラクターである三人は、その痕跡を追って旅をする。 どこか少年漫画を思わせる世界と、ロマン溢れる設定と、そして魅力的な三人と、見事なバランスによって成り…続きを読む

他の方もレビューで書かれているように、突出しているのは主人公であるアリアの魅力的でしょう。 あざとく可愛く、けれどそれは彼女に課せられた宿命へと抗う手段でもある。 ただ、だからとい…続きを読む

序章・破章ときての急章である。 果たしてどのような急展開を迎えるのかと、捲る手が止まらなくなるのは必至である。 覚悟というものがある。 人が覚悟を決めるのはどんな時か。何かを守る…続きを読む

お客様は神様です。 この作品におけるお客様は、まさにこの通り。人だけではなく神様も来る「神様の台所」で、一度夢が潰えたソラは何を得るのか。 人というのはその向こうにも誰かがいるも…続きを読む

何故自ら死を選ぶのか。 死の律たる存在の問いを受けるのは、切腹をしようとした侍である。 この作品の主人公は「侍」たる十兵衛であり、当然十兵衛の側からだけ見ても物語としては大変深いも…続きを読む

人間を豊かに描くというのは、小説だからこそではないだろうか。 この物語は再会より始まる。 恋愛のみならず、様々に人を豊かに描き上げている作品であると言っても、きっと過言ではないのだ…続きを読む

これはミステリーか。間違いなくミステリーである。 しかしながら、それだけでは収まることのない広がりを持った作品でもある。 あまり言及するとネタバレになってしまうのだが、ここはぜひと…続きを読む

記憶喪失の身分もない、家族も亡くした女の子が冤罪で牢に入れられて……というなかなか衝撃的な始まり方をするこの作品。 筋書きとしては王道なのかもしれないが、その上で読み終えてから考え…続きを読む