悪食ーあくじきー

作者 榮織タスク

86

29人が評価しました

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★★★ Excellent!!!

いやもう、徹頭徹尾めっちゃくちゃおもしろかったです。

非の打ち所がない完全無欠の好感度しかないエンタメでした。
いやもうこんなん脱帽です脱帽。
なんなら悪食脱いじゃうレベルの。
丸裸になって五体投地しちゃうくらいの。

文章、ストーリー展開、設定、キャラクター配置にキャラクター造形。
ここまで調和が取れていて最後まで裏切られず気持ちがいい物語、滅多に出会えません。

いやちょっとー! 続編はどこですかあああ!?

★★★ Excellent!!!

悪とは誰が決めるものか。
悪と誰かが定めたものを食らい、削り、記憶も記録も残さない。それはただ殺されるよりも残酷なことであるようにも思う。
そんな悪を食らう悪食が存在する現代日本において、記憶の残った人が存在したことがひとつのきっかけとなった。

ピリピリとした空気が、まさにこの悪食という作品であり、悪食を使う彼らなのかもしれない。
悪食とは何なのか。
悪とは何が定めるものか。
ただ誰かが決める善悪の判断に従うのか、あるいは。

ぜひとも最後まで一気に読んで欲しい。
この結末を見て欲しい。
ぜひご一読ください。

★★★ Excellent!!!

とっっっっっっても面白かった!!
ぜひ書籍化なり映像化なりしてほしい。早い者勝ちですよ!?

本作はまず世界観設定が非常に巧みです。

悪食という怪異が存在する現代日本。
悪食は使役する人の命で「悪」を食らい、食われた人の存在や記憶を世の中から消し去ってしまう。
しかし中には稀に消された人のことを覚えている人間がおり、悪食を使役する人々からすると非常に都合が悪い存在。
ゆえに悪食を使役する側に引き入れられるか、悪食によって処分されるかの二択を迫られる……。
ただし、悪食を使役するのはメリットばかりではなく、悪食に食われた人と同じように周囲から忘れられやすくなり、社会から孤立していく。

もう、この葛藤が生まれるしかない設定が素晴らしすぎます。
自分がこの世界の人間だったらどう立ち回っていくのだろうと考えさせられてしまう。

そんな中、裏社会的に生きる男と、公権力の極秘機関の中で生きる男、二人が些細なことをきっかけに出逢います。
そこから生じた歪みが社会の綻びを広げ、やがて誰にも知られることのない大きな戦いへと発展していく。
ハードボイルドな雰囲気漂う文体で描かれる、手に汗握るクライマックスは必見ですよ。

最後に。
きっと作者様もリスペクトされていると思うので遠慮なく言わせてもらいますが、仮面ライダーBLACK SUNが好きな人は絶対ハマると思います笑
特に最後のあたりはニヤリとすること間違いなし。

個人的には灯耶の過去エピソードもお待ちしています!!

★★★ Excellent!!!

 正義と悪、公と私、人と獣、記憶と忘却、個体と世界。

 かようなアンチノミーを両軸に、1本筋の通ったクライム&デテクティブなストーリーをダークファンタジーに仕上げてしまった。

 それもハードボイルドに!

 火加減は半熟でお願いします、なんて野暮な気持ちで読み始めては、火傷するから予め忠告しておく。
 この小説を食らうならば、こちらも食われる覚悟が要るというもの。

 私は決して、美食家ではないが、味わうこの世界観の根底、隠し味はアカシックレコードと見た。

 普通ではない、粗雑で、禁じられるような意 ――悪食―― シンプルかつダイレクトに名付けられたタイトルの、そこにある確かな存在を見よ。

 結末の一歩手前、ヒーロー&ダークヒーローの、正義を志した白と悪と戒めた黒の交錯する拳もまた、アンチノミー ――二律背反――の余韻を持って、物語を締めているわけだが。
 最終話によって、示されるオルタナティブこそカタルシスと呼ぶに相応しいものだ。

 だから、私は敢えて、読了ともごちそうさまでしたとも口にしない。
 ただただ、この満腹感に、行儀悪くも、ゲップをするのだ。

★★★ Excellent!!!

ついさっきまで元気に笑っていたはずの人を存在していなかったことにする。
そんな魔法が可能なのが『悪食』という存在。

名のとおり、なんらかの『悪』が無いと食べられない、という制約はあります。
ところが、『何が悪なのか』を自分では判断が付かなくなってしまったようなのです。
だから、人間が「これが悪だ! 食え!」と指示するようになりましたが……


もう、この時点でぞわぞわする。
人間は万能じゃない。何が正しくて何が悪いのか簡単に片付く事ばかりではないのに、それをしようとしたら――

歪んだ世界で、保身を探り、正解を求める物語。
簡単に読めない小説だからこそ、たくさんの方に読んでいただきたいのです。

★★★ Excellent!!!

 悪食とそれを手元に置く人々の物語。
 とにかく殺伐とした世界観が素晴らしい。文字どおり、喰うか喰われるか。一瞬でキャラが消え去り、それを当り前のように受け止めて、淡々と暮らしていく登場人物たちの姿に、思わず口元が歪む。
 このダーク・ファンタジーの行き着くところはどこなのか。凄惨な殺し合いなのか、果たして一筋の希望なのか。先が楽しみだ。