概要
その怪異に食われると、食われた者は世の中のほとんどから忘れ去られ、いなかったことになるという。
人食いの怪異。
次は誰を喰うのか、誰が忘れ去られるのか。
怪異が人の社会に浸透していることを、ほとんどの者が知らない。
辻崎灯耶と弌藤弐貴。
立場も考え方も違う二人の怪異使いが、ある事件を境に出会う。
彼らがくだす決断は。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!悪を食らわば業まで。悪食を背負う主人公たちの葛藤がエモすぎる。
とっっっっっっても面白かった!!
ぜひ書籍化なり映像化なりしてほしい。早い者勝ちですよ!?
本作はまず世界観設定が非常に巧みです。
悪食という怪異が存在する現代日本。
悪食は使役する人の命で「悪」を食らい、食われた人の存在や記憶を世の中から消し去ってしまう。
しかし中には稀に消された人のことを覚えている人間がおり、悪食を使役する人々からすると非常に都合が悪い存在。
ゆえに悪食を使役する側に引き入れられるか、悪食によって処分されるかの二択を迫られる……。
ただし、悪食を使役するのはメリットばかりではなく、悪食に食われた人と同じように周囲から忘れられやすくなり、社会から孤立していく。
もう…続きを読む - ★★★ Excellent!!!食い応えのある小説、結末を知る満腹感。
正義と悪、公と私、人と獣、記憶と忘却、個体と世界。
かようなアンチノミーを両軸に、1本筋の通ったクライム&デテクティブなストーリーをダークファンタジーに仕上げてしまった。
それもハードボイルドに!
火加減は半熟でお願いします、なんて野暮な気持ちで読み始めては、火傷するから予め忠告しておく。
この小説を食らうならば、こちらも食われる覚悟が要るというもの。
私は決して、美食家ではないが、味わうこの世界観の根底、隠し味はアカシックレコードと見た。
普通ではない、粗雑で、禁じられるような意 ――悪食―― シンプルかつダイレクトに名付けられたタイトルの、そこにある確かな存在を見…続きを読む - ★★★ Excellent!!!記憶と記録に残らないのは罰か、はたまた。
ついさっきまで元気に笑っていたはずの人を存在していなかったことにする。
そんな魔法が可能なのが『悪食』という存在。
名のとおり、なんらかの『悪』が無いと食べられない、という制約はあります。
ところが、『何が悪なのか』を自分では判断が付かなくなってしまったようなのです。
だから、人間が「これが悪だ! 食え!」と指示するようになりましたが……
もう、この時点でぞわぞわする。
人間は万能じゃない。何が正しくて何が悪いのか簡単に片付く事ばかりではないのに、それをしようとしたら――
歪んだ世界で、保身を探り、正解を求める物語。
簡単に読めない小説だからこそ、たくさんの方に読んでいただきたいので…続きを読む