壮大なスペースオペラでありサラリーマンの立身出世物語でもある、読み応え抜群の作品。
SFではあるものの架空戦記的な色合いが強く、銀河◯雄伝説と課長◯耕作を合わせたような要素を持っています。
この作品の優れた点はそれらを破綻なくまとめ、より面白い物語として昇華させているところです。
とにかく設定が緻密で、歴史や組織、地勢や社会情勢、軍用テクノロジーまでかなり細かく設定されているのが文章の端々から伝わってきます。
この硬い設定をすんなり読ませる人物描写も魅力的で、有能な主人公である柳井が何かというと牛丼で換算するように吊り下げのスーツで換算しようとしたり、人間くさい部分が出ているのがいいですね。
脇を固める部下や女性陣も仕事ができて度胸もある自立したキャラクターたちで、これからが楽しみです。
柳井さんが燻銀なんですよ。
しかし、色んなキャラクターそれぞれ味があるために、主人公読みたい!っていう気持ちを一旦封印して、別キャラを楽しむ構成。
一度感情移入したものを棚上げにして、物語が錯綜して最終的に主人公すごいな!に帰ってくるまでの序盤に脱落者が出る可能性があります。ずっと主人公を追っていくタイプのライトノベルを読み慣れてる層は特に。
さらに一話目から世界観構築の前書きがあるために、スロースタート。
色んな視点から物語が紡がれていって、主人公が何かしら関わり、そしてなんだかんだ収束したときの綺麗さや後味を楽しむ余裕がある方にオススメします。