政治メインで読ませてしまう恐ろしい本格SF

 本作は本格SFでありながら、その比重が政治、外交と言った国家運営に置かれている点が特徴的と言えるのではないでしょうか。
 それでいて、本格SFに於いても兎角間延びしがちな政治に関する描写で読み手を引き込んでしまう(他作品に比べてその量が圧倒的に多いにも関わらずだ)。そこがこの作品の特徴であり、そこに作者の凄みを感じます。

 更に主人公は、オジサン、窓際、独身、自己評価低い、望まぬ立身出世、と流行りの要素をそれなりに盛り込んでおきながら、それを一切あらタイで匂わせないと言う作者様の拘りも高評価。

 単にSFとしてみた場合でも、その練り込まれた世界観と時折顔を出す破天荒なオリジナリティ(税務署員が宇宙戦艦に乗って税金の取り立てに(攻めて)来るって何よ)、そしてそれを過不足無く描き出す文章力。私が読んだここ5年位のSFweb小説の中では出色の出来と言って良いでしょう。

 勿論、万人受けする作品ではないでしょうし、見慣れない地名、人名が頻出する事による読み辛さと言った面は他のSF小説同様です。
 ですが、タイトルやあらすじで敬遠してしまったと言う人には是非一度読んで貰いたい作品です。

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