『小森の花嫁』に続く、夢とうつつの間を彷徨う雰囲気が、魅力的な作品。
少年の初恋の女性が何者だったのかは、読み手に委ねられます。
主人公が集落での幼き日を回顧するスタイルなのですが。
現在進行形の話ではないため、やはりどこか夢の中を彷徨っているよう。
何処までが現実で、何処までが美化された過去なのか。
漁港が舞台なのも相まって、寄せては返す波のようにその境界も曖昧です。
だからこそ、景色の美しさ、その時に咲いていた花、女性の服装。
そういった色を持つものが鮮やかに、ひときわ儚く映るのです。
現実に起きたのは、土地開発と火事だけかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
マジックアワーというタイトルに何を感じるでしょうか。
それは最後まで読んだ時に味わえる、とっておきのお楽しみです。