――和希は九歳の頃、自身の不注意によって双子の妹を亡くした。
こんな絶望から始まる物語だが、和希は驚くほど明るい。
なぜなら、自分こそが一姫であり、亡くなったのは和希であると思い込んでいるから。
女子生徒用のブレザーで登校する和希はとても可愛く、女友達ですら和希が男だということに気づいていません。
座敷童、若葉の霊、寄神信仰、河童といった怪異現象を通して、和希の中で何かが変わっていきます。
テーマは重く感じるでしょうが、ひょうひょうとした叔父や、妹の和葉、女友達とのやりとりが楽しく、読後感も爽やかです。
恐怖と笑いと感動。すべてがつまった物語です。これを読まないのは本当にもったいない!
ぜひ、連休中に読んでみてください。お薦めです!
何を書いてもネタバレになりそうなので気をつけつつ。
遠野の伝承。――そう聞いて思い出すものは複数あれど、その複数にその身を映し出す体験ができるものは数少ない。
そして、その経験を共有し、傍で支えてくれる友人達がいるという幸いもまた多くはない。
この物語は、半身と死によって分かたれた一人の幼子が、
自らの本体と半身の境で迷い、惑い、そして「そのいずれでもない」何かとして日々を生きた先に、たくさんの人々から愛されていたことをつかみ、また此岸と彼岸の境に縫い留められていたくびきから解放されるまでの物語である。
――とかクッソ真面目に書いてますけど、大半ゲラゲラ笑って読みましたからね!
いやもうほんと、あかんってそれはwww
いやマジでwww
死者を演じると聞いて、何を思い浮かべるだろうか。ただ舞台の上で演じるだけならば、舞台を降りれば自分に戻る。
けれどその舞台が日常のすべてとなったとき、当人は、周囲は、どうなってしまうのか。
双子の妹を亡くした和希は、その亡くした妹である一姫の演技を続ける。
演技をしながら周囲と関わる中で、河童や座敷童といった怪奇現象にも出会う。
和希の苗字は遠野である。これは遠野の物語である。
怪奇現象の先に待っているものは何なのか。死者を演じ続ける和希が舞台を降りる時はやってくるのか。
死者を演じてその死の姿を見せることは、ある種の怨霊慰撫である。けれど和希のそれは、果たして誰のためであるのか。死者のためか、自分のためか。
ぜひご一読ください。