死者を想う、死者を演じる、死者に――

死者を演じると聞いて、何を思い浮かべるだろうか。ただ舞台の上で演じるだけならば、舞台を降りれば自分に戻る。
けれどその舞台が日常のすべてとなったとき、当人は、周囲は、どうなってしまうのか。

双子の妹を亡くした和希は、その亡くした妹である一姫の演技を続ける。
演技をしながら周囲と関わる中で、河童や座敷童といった怪奇現象にも出会う。

和希の苗字は遠野である。これは遠野の物語である。
怪奇現象の先に待っているものは何なのか。死者を演じ続ける和希が舞台を降りる時はやってくるのか。
死者を演じてその死の姿を見せることは、ある種の怨霊慰撫である。けれど和希のそれは、果たして誰のためであるのか。死者のためか、自分のためか。

ぜひご一読ください。