「毒」というものは、必ずしも目に見えるかたちをしているとは限らない。
かつて人に言われたことば、生い立ちによって作られたもの、気付かぬうちに己を縛るもの、そういうものもまた、「毒」と形容するべきものなのだろう。
人に飲ませるものだけが、毒ではない。ではこの作品における「毒」とは何か。そんなことを頭に置きながら、ぜひとも読んで貰いたい作品である。
この作品で特筆したいのは、ある種むき出しにされた人間の欲望と、絡み合った思惑と人間関係だろう。
ある事件を皮切りに、表出化してくるもの。
過去から現在まで絡み合った人間関係と、そして「毒」となったもの。
決して譲ることなく、けれど人に見せることもなく、じくじくと欲が蝕み、それぞれがその欲を満たすために欺き笑う。
最終話のある人物のことばこそ、まさに結末で考えさせられる部分だろう。
彼らの「この後」をつい考える。そのことばを、頭にこびりつかせながら。
人間というものがどのようなものか、必見です。
ぜひご一読ください。