硝子というのは透き通って美しく、光を通せばキラキラと輝く。
けれど硝子を通して景色を見れば、その景色は歪んで見えたりするものです。
そんなことをふと、読了後に思ったものでした。
とある硝子工房は穏やかで、ゆったりとした時間が流れ、そしてどうしようもなく優しい。
誰かの日常の隣にあって、そこに溶け込んでいくかのように。
けれど、読み進めるうちに明かされていく事実から、途端に目が離せなくなるでしょう。
なぜ、どうして、そしてただ「ああ、そうか」と気付くのです。
きっとこれは、立ち止まっていた足を動かして、自分の人生を生き直す物語だったのだろうと勝手ながら思うのです。
じんわりと広がって噛み締めるようなラストを、ぜひご堪能ください。