概要
イヴァンは、戦火により顔の半分と身体の自由を失い、スノウは、戦争によって身を売ることを強いられる夜を過ごす。
2人は、イヴァンの「落としもの」をきっかけに、ある日出会い、共に旅に出ることとなる。
イヴァンは自分の失った記憶を求め、スノウは自身を傷つけた忌まわしい記憶を消すべく虚空を彷徨う。
果たして、自分の「最愛の人=Dearest」はどこにいて、それはいったい誰なのかを求めつつ。
旅の各所に潜むのは、終わったはずの戦争の傷跡と影。戦争とは、2人にとって、何時、終焉を迎えるものなのか。
さらに、イヴァンの消えた記憶に絡む謎を追い、追われながら、いつしか迎える旅の終わり。
――2人は、記憶を辿る旅路の最後に、何を知るのか。
※エ
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- ★★★ Excellent!!!傷ついた二人が最愛の人になるまでの物語
戦火により傷痍軍人となったイヴァンと戦争をきっかけに体を売らざるをえなくなった少女スノウの物語は二人の出会いから始まる。
この物語は人間の業を書いている。人間の浅ましさを、欲を、読者に突きつけてくる。それなのに真っ直ぐに心に届くのは、作者様が人間を分かっているからなのかもしれない、と思う。
決して綺麗なだけの物語ではない。そこにいる人達の生きる姿を、命を丁寧に描いた物語は深く心に残って終わった後も雪降る景色と共にエンドロールが頭の中に流れていく。
物語を読み終えたとき、私はこの物語の題名を見る。
そうして彼ら二人の道行きを思い返すのだ。
そして彼らと関わった人々のその後にも思いを馳せる。短い…続きを読む - ★★★ Excellent!!!俺たちはみな、何かに欠けている
現実的には、完全な人間はいない。人というのはみな、何かに欠けているものだ。
精神的に、或いは肉体的に。
生まれかもしれないし、育ちかもしれない。
仮に本人に要因がなくとも。時代という抗えない大きなもの、人の手の届く世界そのものが何かに欠けている。
他人が後世の者が、あれは過ちだというのは簡単だ。現実には、世の中の構造はずっと複雑で、人は完全ではない。国でさえも。
人は群れを作れば、他者に群れの中での正しさを求める。人は理解に困難を感じれば、世界に単純さを求める。
それは創作であっても変わらない。読者というのはとかく、正しさを求めたり、正しくないものに罰を求めるものだ。現実が複雑で欠け…続きを読む - ★★★ Excellent!!!――私は映画を観に来たのか?
映画館から出てきたあとの爽快感を思い起こして欲しい。
ポップコーンを片手にシアターに入り、わくわくしながら椅子に座り、暗転する室内照明に期待を膨らませ、楽しみにしていた映画を手に汗握りながら味わい尽くし、エンドロールの後に扉をくぐったときの、あの感覚だ。
本作を読み終わったときに抱いた感慨が、まさにそれである。
まるで映画だった。
創り込まれた世界観は、本当にその世界が存在するのではないかと思えるほどにリアルで、そこに息づくキャラクターたちは名俳優が演じているかのように「キャラクター」であることを忘れさせるほど生き生きとしている。読んでいくうちに、自分の身体が宇宙に投げ出…続きを読む - ★★★ Excellent!!!このふたり、尊い。ただひたすらに。(拝)
不器用な退役軍人の男、イヴァン。戦争で傷つき、家族や自身の身体の一部を失った彼は、鉄くず拾いをしている少女スノウと出会う。彼女もまた戦争によって家族、そして自分の尊厳を奪われた犠牲者のひとりだった。とある事件をきっかけにふたりは逃げ出すように、あるいは求めるようにして広い宇宙への旅に赴くことになる――。
SFってなんだか専門用語がたくさんだし時代設定も飲み込まなきゃいけないしちょっと敷居が高いな、なんて心配はありません。たしかにこの物語の舞台は、宇宙船で旅行することなど珍しくもなくなった未来の世界。しかしそのさじ加減が絶妙で、“良い感じに便利になった未来”という印象が強いです。読んで理解で…続きを読む