1-0 スノウ

 自分の名前の意味を知ってからというもの、自分が嫌いになった。


 もっとも私は「それ」を見たことはないのだけど。


 だって生まれてから今まで、空から降るものといえば、紅い閃光だったり、灰だったり、ときには黒い雨だったり。

 でも「それ」は「とてもとても清くて美しいものよ」と死んだ母は言っていた。


 だけどそれも、幼い日のおぼろげな記憶。


 それから長いときが経ち「それなら汚し甲斐があるな」とあの夜、私の名前を知った人は嗤った。

 私もそうだと思った。


 そして、ますます、自分が嫌いになった。死にたいほどに。


 助けて。ここから誰か連れ出して。


 いつしか、そう叫ぶことも、もがくことも、忘れていた。

 忘れたいことは、増えていくばかりだったと、いうのに。


 そんなある日、唐突に、戦争は終わった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る