「戦後」を生きるということ
- ★★★ Excellent!!!
SFしかもスペースオペラ的な作品でありながら、この物語が描く「戦後」にはリアリティがあり、ここに描かれる人々は、それぞれの「戦後」を生きている。
戦争を生きぬいた軍人であるイヴァンと、戦争の犠牲者とも言える存在であるスノウが出会い、「雪を見る」という目的のために二人で旅をしていくロードムービー的な展開。そこにイヴァンの失った記憶という謎が絡み、読者を最後まで惹きつけて離さない。
重厚な世界観でありながら読みやすい文章に導かれるうちに、あっという間に読み終わってしまった。
イヴァンが強いだけの「スパダリ」でないところが特にイイ。彼の男性特有の弱さが表現されているところと、儚げなスノウのある種度胸のある性格もバランスが良く、甘いだけでない二人の関係性は、作者の味なのかもしれない。
主人公二人だけでなく、戦争によって愛するものを失った人々の悲しみが描かれているコントラストもあいまって、「戦争」とはなんなのか、「愛」がどれほど人を変えるのか、人間について多くのことを考えさせてくれる。
まさに、恋でも愛でもなく、「最愛」についての物語だ。