概要
自生するものが白い命を得て育つ〈白幹ノ国〉の軍人、高久(たかひさ)匡(ただす)は軍曹の階級を維持したまま新人少尉の教育教官・補佐役を務めていた。彼の教育を受けた新人少尉の生還率は高く、昇進の打診を受けながらもとある理由から固辞し続けて来た。
ある日、高久がかつて、受け持っていた生徒である雪村(ゆきむら)澄人(すみと)の顔がなくなる事件が起きる。高久は澄人の顔を取り戻す為に共に行動することになるが行く先々で違和がつきまとい、やがて亡くなった妹の声が聞こえるようになる。
何故、澄人の顔はなくなったのか。時折、聞こえる妹の声は何を伝えようとしているのか。
これは、なくしたものを取り戻すおかえりの物語。
全4
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!誰よりもやさしい、あなたへ。
十四歳の双子である兄妹が手を取り、『因習』が残る村から密かに抜け出す──雨の音と共にそんな遠い過去をひとり思い出す軍人、高久。口下手で鬼教官、でも深い優しさと強い覚悟を秘めた彼を中心に、レトロチックな独特の世界で繰り広げられる『異世界擬洋風ファンタジー』(作者さん談。でもその通り)です。
人の顔がなくなるという事件は聞くだけならホラーですが、『祝』や『呪』とともに生きるこの世界では決して、起こらなくもない出来事。建物のみならず植物までもが白い〈白幹ノ国〉は、想像するだけでなんともいえない神々しさに満ちています。
かと思えば今ではなかなかお目にかかれないような純喫茶がとにかく素敵ですし、美…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ただいまとおかえり、それが言える時まで
主人公は白幹ノ国の軍人、高久匡。かつての教え子である雪村澄人の顔が消える事件が起き、解決すべく行動します。
神が祝い呪いを与え、その影響が大きい世界。
高久自身も故郷の神により事情を抱えた身。謎を追っていく過程で己の喪失とも直面していきます。
丁寧に造り込まれた世界に惹き込まれ、猫写の細やかさと美しさに息を呑み、だからこそ嘆きや苦しみも強く伝わりました。困難を前に足掻く覚悟もまた。
人と人の関わり、様々な形の愛が優しく描かれ、登場人物に深く共感でき、彼らの喜びは心を打ちます。
祝いと呪いは人同士でもあり得ます。悪意だけでなく互いに思い合うから起きてしまう歪みもありますが、それが共に生きる…続きを読む - ★★★ Excellent!!!君よ生きよ――その生の、終わりまで
ここには、人が生きている。白い白い中で、人が生きている。
祝い呪いは氏子のみ。この言葉をどうか胸に刻んで読んでいただきたい。
主人公として置かれているのは高久匡という軍人である。この人物は教官であり、そして、「生きよ」と言う人である。
読んでいただければ分かることだが、この高久のこの言葉は、軽いものではない。
高久と、そしてその同期である羽坂、さらに教え子である顔をなくした澄人。この三人を主軸に置いて、物語は進んでいく。
そして知るのだ。神の残酷さを、人間の強さを。彼らのみならずこの世界で必死に生きる人々を。
これは、紛れもない異世界ファンタジーである。
そして、これは人間とその生を真摯…続きを読む - ★★★ Excellent!!!とても凝った雰囲気のファンタジーです!
主人公「高久」は軍人男性。
名前を口にしてはいけない「秘級」の村の出身だ。
そこは、双子の生命は、片方を産土神に捧げる、という、特殊な習慣のある村。
高久は、その村から、逃げてきたのだ。双子の手をとって……。
設定がしっかり作られ、世界観も凝っています。
文章も美しくてうっとりです。
物語は、高久が抱える悲しみや、軍人ではあるが、生きることこそ尊い、という彼の信念とともに進み。
彼の教え子が、顔をなくす、(のっぺらぼうのように、顔が誰にも判別できない。思い出せない。写真からも顔が消える。)という難事件を解決するべく動いていきます。
面白いですよ!