絵というものには、魅入られるものであろうか。
『オフィーリア』『夢魔』『マラーの死』『死の床にあるルイーズ・ヴェルネ』、いずれも名の知れた絵画である以外に、これらの絵にはある種の共通点があるのかもしれない。
これらの絵の背景を、知っているだろうか。もちろん知っていれば楽しめることはあるが、知らずとも問題は無い。
この作品を読めば、その絵を見たような気分になれるだろう。
果たして絵というものは現実を切り取ったものであるのか。
絵というものは美しい。美術であり、芸術である。
しかしながらこれらの絵は、ただ『美』だけではない。
そこに漂うものを、体感して欲しいと思う。
ぜひ、ご一読ください。
こちらの作品は、4つの絵画をモチーフにして描かれている。
各作品の背景や魅力、雰囲気をしっかり抑え、文章全体で語った作品。
この作品の良さは、そこだけではない。
まるで絵画から延長線として伸びてきた今作は、『絵』と同じくらい大きなテーマとして『死』を取り扱っている。
直接的描写と抽象的描写を巧みに織り交ぜ、そのどちらもを綺麗に、それでいて怪しく描いている。
ぐっと物語に引き込まれたら最後、忘れられない読書体験が待っていた。
1話1話が絵画に合った雰囲気を纏っていながら独自性も持っている。
加えてパリスグリーンという4話で1つの作品としての雰囲気もしっかりと保っている、まるでこの作品が新たな1つの絵画のようだ。
モデルとなった絵を知っている人も、知らない人も楽しめる作品。
知らない人は是非1度そのまま読み、絵を調べてからもう一度読み直してみてほしい。