笑って、泣いて、また笑う。そんな愛に満ち溢れた異色の冒険譚!
今作はそんな物語の世界にどっぷりと浸かって、登場人物たちと共に旅してゆけるような傑作。
主人公の勇者・エッドは任務帰りに魔物の集団に襲われ、仲間を庇って命を落とす。まあいいか、激務続きだったし、天界はとても過ごしやすそうだ——と思っていたところに、まさかの「ちょっと待った!」が掛かる。
仲間の聖術師であるメリエールが蘇生術を施し、彼の魂は地上へ……抵抗を試みるも「未練」とやらのおかげで天界には行けず、しかも完全な蘇生ではなく亡者として蘇ってしまった——!?
彼の未練とは、メリエールに想いを告げる事。しかし亡者と聖術師はまさに水と油、ロミオとジュリエット……それくらい相反する存在。
幼馴染の天才闇術師ログレス、そして再会したメリエールと共に、もはやヒトではなくなってしまった自分の姿を受け入れながらこのラストクエストに挑む事に。
……と、書いてしまうと一見悲劇的ですが、そこはまあ最初のプロローグから読んでみてほしい。
とにかく魅力溢れたキャラクター達と、コミカルな会話の応酬、そして綿密に練られた世界観と設定。何より、主人公であるエッドの明るさが読者をその先へと引っ張っていってくれます。
途中彼らの出逢う新たな仲間達との絆にホロリとし、困難に立ち向かうときは手を握りしめてしまうほど。メインの二人だけでなく、他の誰かのエピソードも一つ一つが素敵なのです。
もしかしたら魔術書を読んでいたかな? と思わされるほどのセンスある言葉の羅列は、読んでいるだけでわくわくするほど。
滅茶苦茶面白かった!! これだけ書いたらものすごく陳腐に思われるかもしれないのですが……本大好きな人の中には経験がありませんか? そう、例えば『はてしない物語』の分厚くて大きな表紙を抱きしめて、部屋にひたすら閉じこもってどっぷりと物語の世界を旅したような、そんな経験が……。
まさしくこの作品は、そんな体験ができると断言できる"生きている物語"。
怒涛の展開のラストには思わず涙も……。
エッドはその未練を晴らす事ができるのか?
そして愛するメリエールの気持ちは?
さて勇者さま、いえ……勇亡者さま。ラストクエストのお時間です!
こちらの作品の冒頭は、勇者が魔物によって死亡、そして天国へ行ったところ、ヒロインの聖術によって、その勇者が亡者として生き返ってしまう!ということから進んでいきます。
そんな主人公エッドはある未練を叶えるため、またこの世で奮闘することになります。
その願いというのは、愛していたヒロイン、聖術師のメリエールに秘めた思いを伝える事。
亡者と聖術師、単純に考えると、どう考えてもうまくいくはずがありません。
そこが面白いところでもあり、この作品の要となっています。
ファンタジーならではの魔術や、神々、天使など、様々な事象や物事が細かく絡み合いながら二人がどんどん近付き、コミカルにそして時にはしんみりと進みます。そしてラストには、ハッピーエンドが待っています。
それまで紆余曲折があった分、エピローグでは泣きまくりました。
彼らを支えてきた、仲間達の活躍も多く描かれ、その個性豊かなキャラクターにも魅了されます。
そして、ファンタジーの醍醐味が物語から深く味わえる部分も素晴らしいところでした。
ゲームでもあるようなジョブ風に各人物達の職業が完璧に分かれており、その役割がはっきりしているところなど、魅力がたっぷりです。
ファンタジー×恋愛ものがお好きな方にぜひおすすめしたい物語です!
主人公は勇者。いろんなジョブの仲間と一緒にクエストをこなす働き者だったのだけど、依頼をこなし続ける毎日は疲弊を招く。ついに彼は敗北=死を体験する事になるのだけど……もう導入からびっくり展開。気持ちよく天に召されようという所を、引き留められ……結果、死んでるけど生きてるように動き回れる亡者として復活してしまうという。
亡者(アンデッド)といえば、倒されるべきモンスターですから、そりゃあもう目覚めたら早速、聖なる魔法で攻撃されちゃうわけで。
何故こんな事にーーのドタバタから、この状況を打開するには未練をはらすしかない! けれど! 彼の未練は仲間の聖術師に想いを告白できていない事だった!? 聖術師っていったら亡者の敵みたいなもので、ロミオとジュリエットの家の確執なんてミジンコの障害に思えるほどに、立ちはだかる高い壁。
仲間の闇術師(こちらは亡者と相性抜群ですね♪)と共に、打開策を求めて試行錯誤。いい感じになったと思ったら、次から次へと事件も発生。新しい仲間を加えつつ、毎エピソード退屈する場面なし。
勇亡者は課された最後のクエストを無事達成できるのか。まさに涙あり笑いありのエンターテインメント冒険譚。恋愛ジャンルですが、性別問わずに楽しめる傑作です。
任務からの帰り道、勇者さまは真っ二つにされて死んでしまいましたとさ、おしま……わない!! まさかの勇者死亡から始まる物語。この始まりだけでこれがいかに型破りな物語であるかがお分かりいただけるはず。
ブラック労働に疲れ果て、死を受け入れようとしていた勇者エッドの蘇生を試みるパーティの一員で聖術師のメリエールは彼の想い人。しかしながら、エッドは彼女にその気持ちを伝えることができていません。うんうん、存在が近すぎると、そして大きすぎると、かえって告白はできなくなりますよね。今の関係が大切すぎて壊したくないその気持ち、わかる、わかるよエッド。それはさておきその「未練」のせいで、エッドはまさかの亡者、つまりアンデッドとなって復活してしまいます。亡者といえば地上を彷徨い歩くかつて人だった魔物。そして聖術師は亡者の魂を浄化して速やかに天界へ送る使命を帯びています。亡者と聖術師、相反する存在同士のこの恋の行方はいかに……!?となってしまうところですが、それだけではないのがこの小説の素晴らしいところです。
亡者となったエッドの頼もしい友人であり天才闇術師のログレスを初めとした(敵味方問わず)魅力的なキャラクター達、このほのぼのが永遠に続いてほしいと思ってしまうスローライフパートと、対照的に手に汗握るバトル、過去から続く人と魔物の戦いの歴史。エッドとメリエール、それぞれの献身。これらが物語を彩り、次へ次へと読み進める原動力となっています。
死んでなお明るく元気で前向きな勇者エッドと限りなく優しくて真面目だけど頑固なメリエールがたどり着いた結末はとは!?
何層にも重ねられた物語が織りなす最高のエンタテイメントをぜひ、ご堪能ください。
最高の読書体験でした。自信をもっておすすめできる作品です。
序盤から主人公のエッド・アーテルが魔物によって死亡するという衝撃的なシーンから始まる本作。でも安心してください。エッド本人が明るい性格で、迎えに来た天使がコミカルなのでコメディチックに読めるシーンです。
勇者としての激務に疲れたエッドはこのまま天に召されることを望みますが、聖術師であるメリエールの手によって蘇生術を施され、両者の力が拮抗した結果、半端者の「亡者」となって蘇ってしまいます。
成仏するには彼の未練をはらさなければいけないらしいのですが、その未練とは聖術師であるメリエールに想いを告げること。だけど聖者と亡者(魔物)では聖なる気に阻まれ触れることすら許されない。メリエールに想いを告げる為に彼のラストクエストが始まる。というお話なのですが。
ところで皆様がエンタメ作品に求めるものは何でしょう。笑いあり涙あり、燃えるものあり面白さもあり…こちらの作品にはそのエンタメ要素がギュギュッと全部詰まっています。まずはとりあえず3話ほど読んでみてください。
軽快でコミカルな筆致とテンポの良い場面展開。恐ろしいほどにかっこいい詠唱と共に展開される魔法バトルは手に汗握る程熱く、召喚術は脳内アニメで中二心が騒いでしまうほどにカッコいい。肉体的なバトルシーンだけではなく、巧妙な駆け引きやどんでん返しも細かく仕込んであり、私は闇術師ログレスと魔人によって行われる「奴隷問答(お互いに謎掛けをしあい、負けた方が奴隷になる)」がお気に入りです。魔法や魔術のことを知らないはずなのに、読んでいて両者の知識の深さと機転が本当に面白かったです。
熱いバトル、魔術の知識による頭脳戦、コミカルで時には爆笑してしまう文体でテンポよく進んでいきながら物語は後半へ。前半も面白いですが、後半はさらに面白く、同じテンポのまま最後まで一気に駆け抜けてくれます。
後半は特に生死について考えさせられることが多くなります。聖術師と亡者という相容れない二人。エッドは間違いなく死んでいて、魔法によって万事解決なんてご都合主義には頼りません。死とは何か。生きるというのはどういうことか。エッドの生前や亡者となってからの記憶が語られ、メリエールとエッド、両者のセリフに重みが増します。物語の中で徐々に明かされていく「死と救済」の意味を知った時、涙が止まらなくなりました。
最後は読者の期待を裏切ることなく万感の終幕。ここまで読んだ方には文句のない良いラストでした。
ここで忠告です。この作品を読む時、ラストを先に読んではいけません。オチを知っただけではこの感動は得られない。エッドや仲間達と共に苦楽を共にして最後まで旅を続けてきたからこそ、そしてこの物語における救済の意味を知ってこそのカタルシスです。つまらない好奇心でそのチャンスを無駄にしてしまうなんてこと、読書好きの方はもちろんやりませんよね?
オチが気になる方はどうぞ、時間を取ってどっぷり浸かりながら読んでください。45万字ありますが、テンポが良いのでスルスル読めてしまいます。
死ぬことは何か。生きることは何か。
そして人を愛するのはどういうことなのか。
読者の問いに真正面から答えをぶつけてくれる作品です。
ぜひ多くの人に届いてほしい素晴らしい物語でした。
中堅勇者のエッド・アーテルは、魔物にばっさり切り裂かれ、天に召される。よほど忙しい毎日だったのだろうか、天界では安らげると信じた彼は、躊躇なく死を受け入れた。が、それを引き留めたのは仲間の聖術士。強力な蘇生術であれよあれよとエッドの魂を地上へと引きずり戻す。「夢の天界暮らしが、待ってるっ……! 俺はもう、引退するんだっ……!」と抵抗するエッド。さすがは勇者、彼の魔力は蘇生術とぶつかり合い、結果として蘇生術は失敗に終わる。さりとて彼が天界暮らしにありつけたわけでもない。魂は地上へと呼び戻され、不完全な蘇生術は彼を亡者として蘇らせたのであった。え、どういうこと?
問題は次の通り。彼は躊躇なく死を選んだにもかかわらず、なお生への未練を残していたということ。そのことに死ぬまで気づけなかったのだ。
しかし死んだ途端に気づく。自分が、誰を、どれほど深く愛していたのかということに。そして直面するのが、亡者は、その愛する人に近付くことがとても困難だという切ない事実だった。
愉快で軽快な書き出しに反して、この物語が抱える問いは深い。そこには人間の生と死を裏側から見つめようとする真摯な眼差しがある。死にゆく定めの人間が、その限りある命の中で、幸せを求めているのだという切実な事実に向き合わなければならない。
エッドは未練を晴らすことができるのか?
その未練は本当に晴らしてよいものなのか?
明るい筆致と緻密な計算に裏打ちされた、ビターでポップな物語。王道を斜めからぶった切ったような状況と、全方位に見晴らしがよい魅力的なキャラクターで彩った冒険ファンタジーを、一緒に楽しもう!
(アニメ化したら絶対成功する作品なので、制作会社の皆さま、早い者勝ちですよ?)
冒険の途中で勇者が死んでしまったら教会で蘇生してもらう――という、RPGによくあるセオリーを逆手に取った、超個性的な冒険ファンタジーです。
シリアスな筋がユーモアあふれる筆致と賑やかなキャラで描かれていて、飽きずにぐいぐい読めちゃうのが魅力。
物語は、「勇者」の称号を持つ主人公エッドが魔物の凶刃に倒れ、天の国へ召されるシーンから始まります。ブラック企業さながらの過剰労働に疲弊しきっていたエッドは、未練なく天界へ向かうつもり、だったのですが。そこに待ったをかけたのは、仲間の「聖術師」メリエールによる強力な蘇生術でした。
天界へ逝きたいエッド、逝かせたくないメリエール。両者の魔力で綱引き状態のところに、天使は告げます。
「……当局と致しましては、“未練”がおありになるお方は、天界へとお連れできません」
こうして、すんなり成仏できなかった上に、うっかり蘇生術に抵抗してしまったエッドは、正常な蘇生をすることができず、亡者(魔物)として棺桶からコンニチハする羽目になってしまいます。
実はエッドの未練とは、心から想う女性に告白することで、その女性というのが聖術師であるメリエール。信仰心が深く生真面目な彼女に、魔物と化したエッドが近づくこと自体が命懸け(死んでるとはいえ)なのですが。
幼馴染みで親友である闇術師ログレスの協力を得て、勇者であり亡者である勇亡者エッドは、聖術師メリエールと「お話し」をするため、彼女を拐おうと計画するのでした。
自身の死という絶望的な始まりながら、根がポジティブなエッドと淡白ながら仲間想いのログレス、愛情深いヒロインズや脇を固めるユーモラスな住人たちのお陰で、とても味わい深い冒険譚を楽しむことができます。
シリアスを増すストーリーの中できらめく救済のすべは、優しさと献身によって導かれた、万感の終幕でした。
どっぷり浸かれる物語、ぜひご一読ください。