生と死を裏側から見つめる

中堅勇者のエッド・アーテルは、魔物にばっさり切り裂かれ、天に召される。よほど忙しい毎日だったのだろうか、天界では安らげると信じた彼は、躊躇なく死を受け入れた。が、それを引き留めたのは仲間の聖術士。強力な蘇生術であれよあれよとエッドの魂を地上へと引きずり戻す。「夢の天界暮らしが、待ってるっ……! 俺はもう、引退するんだっ……!」と抵抗するエッド。さすがは勇者、彼の魔力は蘇生術とぶつかり合い、結果として蘇生術は失敗に終わる。さりとて彼が天界暮らしにありつけたわけでもない。魂は地上へと呼び戻され、不完全な蘇生術は彼を亡者として蘇らせたのであった。え、どういうこと?

問題は次の通り。彼は躊躇なく死を選んだにもかかわらず、なお生への未練を残していたということ。そのことに死ぬまで気づけなかったのだ。
しかし死んだ途端に気づく。自分が、誰を、どれほど深く愛していたのかということに。そして直面するのが、亡者は、その愛する人に近付くことがとても困難だという切ない事実だった。

愉快で軽快な書き出しに反して、この物語が抱える問いは深い。そこには人間の生と死を裏側から見つめようとする真摯な眼差しがある。死にゆく定めの人間が、その限りある命の中で、幸せを求めているのだという切実な事実に向き合わなければならない。

エッドは未練を晴らすことができるのか?
その未練は本当に晴らしてよいものなのか?

明るい筆致と緻密な計算に裏打ちされた、ビターでポップな物語。王道を斜めからぶった切ったような状況と、全方位に見晴らしがよい魅力的なキャラクターで彩った冒険ファンタジーを、一緒に楽しもう!

(アニメ化したら絶対成功する作品なので、制作会社の皆さま、早い者勝ちですよ?)

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