超能力リスク社会で、きみと群れる!

近未来、人類に超能力が発現した社会。超能力は必ずしも万能ではなく、ちょっとしたテレポートやテレキネシス、テレパシーを可能とするものに過ぎない。とはいえ超能力が暴走した場合には事故が起こってしまうため、超能力に対するリミッターが開発されたり、超能力者に対する行動制限が課されたりしている。つまり、超能力は恩恵であるというよりは、むしろ障害として、超能力者を悩ませている。

主人公の清楓もまた僅かばかりのテレキネシスとほんのちょっとのテレポートができる女子高生だ。そんな彼女が夜中に野良犬を拾ったところから物語は転がり始める。野良犬とは自称に過ぎず、実際には窪崎という名前の飄々とした男性、それも科学者であった。彼の研究を巡るいざこざが清楓にも降りかかる……と思いきや、展開はむしろ清楓を台風の目として推移していくことになる。

一匹狼は群れたがる。この作品において、一匹狼たるキャラクターたちは望んで一匹になったのではなく、いつの間にか、やむを得ず、孤立して一匹となっている。しかし、狼というだけあって逞しい。清楓はヒノキのように真っ直ぐな心の持ち主だ。窪崎は不器用ながらも真摯な性根を持っている。清楓の親友である真友は、複雑な生い立ちながら他人を慮る強さがある。事態に深く関与するPSI管理局の富沢は、他人には言えない苦悩を抱えてなお優しさを失わない。この作品の一匹狼たちがいずれ群れを成すことがあるのだろうか。ともに未来に向かって歩み出すことができるのだろうか。
その結末は、ぜひご自身の目で確認されたい。

軽快なキャラクター、迫力のある事件描写、叙情的な語りの魔力、どこをとっても見所あり。本編ではひとつの事件が収束するが、後日談で語られるのもただのボーナストラックではなく、この物語が抱え込んでいた問題の総決算となっている。読み終えた読者を待ち受けるのは、万感の思いだろう。MACKさんは徹頭徹尾、余韻のつくり方が上手いのです。

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