『一匹狼は群れたがる』は超能力を中心軸に据えた作品ですが、よくある超能力アクションでも超能力探偵ミステリでもありません。
超能力が認知された社会に生きる人々が織りなす、社会派シリアス人間ドラマと、甘々純愛ラブコメが交互に展開される「苦くて甘いSF群像劇」となっております。
「人類の一定数に、超能力という身体拡張が起こった場合、少数派の超能力者たちには、どのような法的・身体的制御が行われるか?」という視点で世界設定が構築されており、SFファンはその思考実験を楽しめることでしょう。
リアル志向に振り切った社会派『X-MEN』と例えられるかもしれません。
登場する超能力はテレポート、テレキネシス、テレパスなど、超能力設定の中では普遍化されているものばかりですが、その運用の仕方がとても面白かったです。
超能力の発動によって人間関係の機微が描かれたり、映像として印象的なシーンが生まれたりするだけでなく、「超能力が発動しなかったこと」によっても、物語が駆動していきます。
ライトな語り口ですが、ライト層以外にとっても唸らされる「通な作品」に仕上がっていると思います。あらすじを読んでピンときた方は、是非読んでみてください。
ヒロインの清楓ちゃんも可愛いぞ!←とても重要
近未来、人類に超能力が発現した社会。超能力は必ずしも万能ではなく、ちょっとしたテレポートやテレキネシス、テレパシーを可能とするものに過ぎない。とはいえ超能力が暴走した場合には事故が起こってしまうため、超能力に対するリミッターが開発されたり、超能力者に対する行動制限が課されたりしている。つまり、超能力は恩恵であるというよりは、むしろ障害として、超能力者を悩ませている。
主人公の清楓もまた僅かばかりのテレキネシスとほんのちょっとのテレポートができる女子高生だ。そんな彼女が夜中に野良犬を拾ったところから物語は転がり始める。野良犬とは自称に過ぎず、実際には窪崎という名前の飄々とした男性、それも科学者であった。彼の研究を巡るいざこざが清楓にも降りかかる……と思いきや、展開はむしろ清楓を台風の目として推移していくことになる。
一匹狼は群れたがる。この作品において、一匹狼たるキャラクターたちは望んで一匹になったのではなく、いつの間にか、やむを得ず、孤立して一匹となっている。しかし、狼というだけあって逞しい。清楓はヒノキのように真っ直ぐな心の持ち主だ。窪崎は不器用ながらも真摯な性根を持っている。清楓の親友である真友は、複雑な生い立ちながら他人を慮る強さがある。事態に深く関与するPSI管理局の富沢は、他人には言えない苦悩を抱えてなお優しさを失わない。この作品の一匹狼たちがいずれ群れを成すことがあるのだろうか。ともに未来に向かって歩み出すことができるのだろうか。
その結末は、ぜひご自身の目で確認されたい。
軽快なキャラクター、迫力のある事件描写、叙情的な語りの魔力、どこをとっても見所あり。本編ではひとつの事件が収束するが、後日談で語られるのもただのボーナストラックではなく、この物語が抱え込んでいた問題の総決算となっている。読み終えた読者を待ち受けるのは、万感の思いだろう。MACKさんは徹頭徹尾、余韻のつくり方が上手いのです。
全ての人間が何かしらの超能力を持った世界。超能力はA〜Eランクに分類され、主人公・日夏清楓はCランク。超能力が日常となり、犯罪や事故防止のため、社会全体で管理や整備が進んでいます。
近未来で非現実的ではありますが、超能力者への対応がすごく現実味を帯びている感じがして、どこか身近に思えます。超能力というとバトルの印象が強かったのですが、この物語はどうして超能力が生まれたのか?と謎を追ったり、清楓をはじめとする超能力が原因で孤独になってしまった登場人物たちの人間ドラマが描かれたりしていて一味違った作品です。
番外編も本編同様のボリュームで起承転結があり、読み応えたっぷり。一匹狼たちが出会うことで成長し互いに支え合っていく、最高なストーリーです。細部まで綿密に練られた設定、素敵なキャラクターたちに魅了されます。言葉で言い表せないほど面白かったです!
普遍的な現代に現れた超能力、それにより多くの変換を求められた社会のルール、今作は変換期の中で生きる男女数名の視点から進む物語です。
あらすじに書いてある通りバトル物ではなく、どうして超能力が生まれたのか? さらなる成長は可能なのか? 人知を超える力を人知により掌握できる力にしようと科学的観点で綴られるドラマ。
主人公の一人「清楓」は超能力を持つ少女、しかし半端な力と国によってつけられた制限により不自由な毎日を送っています。
超能力を持っているのに持っていない人よりも不便な生活を強いられている設定が面白く作品にどんどん引き込まれていきます。
そんな燻っていた彼女が「窪崎」と言う一人の男性と巡り合ったとき、超能力を巡る物語が熱くなっていきます。
この二人の不器用であり初々しく、そして素敵な恋模様も今作の大きな見所です。
登場する人物一人一人に細かな日常が存在して彼女たちは物語の中で確かに生きているんだと理解できる、完成度の高い濃密な世界。
近未来を彩る科学、友情、恋愛、ドラマ、多くの人間模様が絡み合うこの物語、是非一度読んでみてください。
番外編を含む最終話まで読み終えました!
最後が、最後もーーー!とっても良くって……
この小説は一人の女の子を中心とした群像劇で、そのまとまり具合がとにかくすごい。
ミステリアスな超能力世界のお話で非リアルなのに、すんごーく現実味があり、本当にこんな世界があるのではと、のめり込んでしまうという。
そしてなんといっても魅力的な登場人物たち。
特に男性陣たちに乗り移ってしまう勢いで、私は彼らと一緒に悩み、悲しみ、最後はうるっときてしまいました。
読者へきちんと伝えるという文章力と全体のバランスもすっごいなと、素人なりですがとても感じてしまいました。
私はこの作品の実写映画が個人的にとっても見てみたいです(///∇///)
めちゃくちゃオススメなのでぜひ読んでほしい作品です。
現代社会に出現した超能力。人はその強さをランク分けし管理する。本当に超能力が出現した場合、国はこうやって国民を管理するんだろうなと感じさせてくれ、納得のいくものです。
テレポートの能力を持っていたら、窃盗なんてし放題ですから、対策の取ってあるお店にしか入れないですし、気軽に買い物や外食も出来ないというリアリティ。
なんでしたら、その対策用の機械はなぜ、超能力に干渉し対策となるのか、なんて細かい設定が緻密に盛り込まれています。
その緻密な設定に人間関係を加え、甘酸っぱいロマンスを繰り広げる。どんな力を得ようとも、力を使うのは人間であり、そこには人の想いがあり、色んな感情があるんだということを教えてくれます。
緻密な設定なのに、説明を押し付けることなく、日常の中で然り気無く教えてくれますし、ラストまできっちりと魅せてくれるこの作品を、是非とも読んでほしいです。
超能力が普遍的に確認されるようになり、ランク付され、管理されるようになった時代。
「自身テレポート一メートル、念動力推定二キログラム、Cランク」
という微妙な超能力を持つことで、店舗への入店を制限されるなど不自由はあるものの、高校生としてのんびりと過ごす清楓は、ある日、ひょんなことからその能力を使って大型犬のような青年を拾ってしまったことから、やがて厄介な事件に巻き込まれ——。
緻密に作り込まれた超能力が存在するという世界観と、それを描き出す硬質な描写でまず惹き込まれ、さらに、主人公の清楓さんが狡くどこかアンバランスな大人の窪崎に惹かれていく様子がなんとも甘酸っぱいのです……!
清楓さんはそれでも受け身で待ち続けるわけではなく、時には自分の能力と創意工夫で危機を乗り越え、大切な人のためには自らの危険も顧みない強さを発揮します。次第に窪崎も、そして事件を通して関わった富沢さえも惹きつけられていき……。
彼女の持つ能力、暗い過去と親友との関わり、秘められた祖父の思いなど、複雑に絡みもつれた人間関係の糸が、やがて彼女と窪崎さんの想いで切り開かれていくラストは本当にああよかったー! と幸せな気持ちになれる見事な大団円でした。
おすすめです!
現代社会に超能力が出現したらどうなるか?をテーマに描いた作品です。
この物語に出てくる「超能力」は、いわゆるバトルもののような派手なものではありません。「1メートルだけテレポートできる」「半径2キロメートルだけ物質を飛ばせる」「触れた人の心を読む」などのように、制限のかかったものです。
作中ではこれらの超能力が個を際立たせる意味合いとして用いられており、彼らの役割を明確にしている所が本作の最大の魅力でしょう。
超能力のリミッターつきでないとお店に行かれない(テレポートできてしまうから)、超能力の研究施設など、実際に人類に超能力が出現した場合の法律や社会のルールがしっかりと作り込まれている所も非常に面白いです。
個人的には、なぜ超能力が出現したのか?という研究内容もしっかりと筋道立てて考えられている所に驚きました。
また、主人公である女子高生の清楓と科学者である窪崎のロマンスも物語に彩りを添えています。
目的の為には手段を選ばない、接触テレパス(触れた人の心を読む)の窪崎は、当初は利用する為に清楓に近づいていましたが、彼の能力を知っても懐に飛び込んでくる純粋な清楓に、次第に彼女を大切に想うようになります。
しっとりと読ませる、落ち着いた雰囲気の物語ですが、この恋愛パートのときめきも本作の魅力のひとつです。
色気のある大人の男性の魅力に、惚れない女性はいないのでは?というかっこよさ。
ぜひ胸をときめかせながら読んでいただきたいです!
物語に出てくる一匹狼達。彼らは孤独に生きつつも、それぞれの立場や能力を使ってお互いを補い合います。
最後に彼らが群れを成すシーンは圧巻で、思わず胸をうたれました。
現代社会の中で孤独に生きるすべての者達に読んでもらいたい、素敵な作品です。
近未来の超能力ものというと、選ばれし者として描かれ、その恍惚と悲哀に押しつぶされそうになる主人公とその悲劇…という一昔前の固定イメージがあって、ちょっと重くて好きじゃないかもしれないという先入観がないわけではありませんでした。
が、そんなクソ先入観は、ものの見事に、とても気持ちよく裏切られました。
家庭の温かさを知らない女子高生と、ハードボイルドテイストを持つ研究者と、影のある公務員と……。登場人物たちが少しずつ動きを加速していくにつれ、物語は思わぬ方向に進んでゆき、次の話が待ち遠しくてたまらなくなりました。
「超能力」というアイテムが核にあるとはいえ、登場人物たちそれぞれの精神や愛や人生観の変化と成長の物語でもあります。
そして、かわいくて素直でやさしいけれど一本筋が通っていて、かしこいのに茶目っ気もある少女は、作者の理想の女性像、あるいは作者自身の姿が投影されているのかもしれません。
彼女の周りの人々を本人の気づかぬうちに温かな空気で包み込んでいく主人公の姿と、最終的には巨悪も極悪人もいない結末には、少し物足りなさを感じる方もあるかもしれません。
しかし、読後感のこの爽やかさとほのかな温もりは、コロナで閉塞した中、ジワジワと心をむしばむ鬱屈した気分を、パッと晴れやかにしてくれました。
未来の姿は決して暗いばかりではない、人類はもしかしたら捨てたもんじゃないかもしれません。
凛とした精神を持つ志高き狼たれ、されどその心にはやさしい春風をまといたまえ。
そんなメッセージが心にしみました。
こんな世界が来ることがあるのだろうか。進化ではなく退化と言う言葉があった。かつて人間が行ったことを考えると、人間はむしろ退化しているのかも知れない。オーパーツなるものがある。その退化の過程で、かつて人間に備わっていた能力が残ることがあるのかも知れない。なんて考えたりして。
一匹狼が群れをなすと言う展開が面白いし、それはまた一人では生きていくことが難しいことでもある。加えてどこかでいろいろと関わりが、偶然か必然なのかできていく。
前作とは全く違った畑という感じがありとても楽しく読ませていただきました。ありがとうございました。