孤独に生きる狼達よ、群れを成せ

現代社会に超能力が出現したらどうなるか?をテーマに描いた作品です。

この物語に出てくる「超能力」は、いわゆるバトルもののような派手なものではありません。「1メートルだけテレポートできる」「半径2キロメートルだけ物質を飛ばせる」「触れた人の心を読む」などのように、制限のかかったものです。
作中ではこれらの超能力が個を際立たせる意味合いとして用いられており、彼らの役割を明確にしている所が本作の最大の魅力でしょう。

超能力のリミッターつきでないとお店に行かれない(テレポートできてしまうから)、超能力の研究施設など、実際に人類に超能力が出現した場合の法律や社会のルールがしっかりと作り込まれている所も非常に面白いです。
個人的には、なぜ超能力が出現したのか?という研究内容もしっかりと筋道立てて考えられている所に驚きました。

また、主人公である女子高生の清楓と科学者である窪崎のロマンスも物語に彩りを添えています。
目的の為には手段を選ばない、接触テレパス(触れた人の心を読む)の窪崎は、当初は利用する為に清楓に近づいていましたが、彼の能力を知っても懐に飛び込んでくる純粋な清楓に、次第に彼女を大切に想うようになります。
しっとりと読ませる、落ち着いた雰囲気の物語ですが、この恋愛パートのときめきも本作の魅力のひとつです。
色気のある大人の男性の魅力に、惚れない女性はいないのでは?というかっこよさ。
ぜひ胸をときめかせながら読んでいただきたいです!

物語に出てくる一匹狼達。彼らは孤独に生きつつも、それぞれの立場や能力を使ってお互いを補い合います。
最後に彼らが群れを成すシーンは圧巻で、思わず胸をうたれました。

現代社会の中で孤独に生きるすべての者達に読んでもらいたい、素敵な作品です。

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