事故物件専門の異能除霊師・無量 弐千佳と大学生・有瀬 安吾の名コンビの活躍が痛快で楽しいオムニバスドラマです。
陰と陽、まったく正反対の素質の二人が互いに補い合い、その場所に残留する穢れた魂を浄化していきます。
タイトル通り、どの物件もホラー好きならワクワクするタイトル揃い。
それぞれの物件にまつわる逸話も毎回凝っており、どんな手法で彼らを解放するのか楽しみに読ませていただきました。
キャラクターの掘り下げも秀逸です。
弐千佳と安吾の軽妙な掛け合いがとにかく楽しい!
二人が困難なケースにどう立ち向かうのか、ワクワクします。
各話に隠されたギミックも面白く、秘密が分かったときの驚きと爽快感は癖になりそう。
物語の終盤には弐千佳の人生に大きな転機が訪れます。
コミカルなのに物語に厚味があり、しっかり読ませる作者の文章力と構成力は素晴らしい。
一ファンとしてぜひ続編を期待します!
ホラーかなと回れ右しかけた人は戻ってきてください。
読めます。井戸から出てくる髪長いお姉さんの映画のCMだけで夜眠れないような、そんな私でも一日とかからず読んでしまいました。やめられない止まらない。前のめりで読んじゃう。
クールでドライな、『霊的』特殊清掃人の弐千佳さん(陰)と
サイケデリックなナイロンシャツで言動も文面も何もかも南国かっ!なアシスタント有瀬くん(陽)
このふたりが、数々の事故物件の霊的現象をお掃除しに行く、お仕事バディものです。
まず、このふたりのやり取りが面白い。
有瀬くんがすっごいんですよ。
読んでるのに、目にうるさい。意味分からないこと書いてますけど、読んだらわかっていただけるかと。めっちゃうるさい(褒めてます)
有瀬くんがひたすら面白くて、それをすべてクールにいなしてクールに心の声でツッコむ弐千佳さんが堪らないんです。会話の合間に入る彼女の冷静なご感想に「ほんとそれ」と何度うなずいたことか。
ミステリとしての面白さも、もちろん!
ストーリー中、四つの事故物件の原因究明に向かうんですが、そのどれもが読んでいるこちらも同伴して現場で頭を悩ませている気分になります。少しずつ出てくる情報を頼りに、なんでだぁ?と真剣に悩むから、もうどんどん先へ進んでしまう。
さらにさらに、ふたりの背景や、バディものならではの信頼構築。弐千佳さんの抱える闇や、有瀬くんによる定期的な飯テロ。そしてファミレス行きたい……やたら、ファミレス行きたくなる……ファミレスぅ。
と、もう、こんなレビューでは書ききれないぐらいお腹いっぱいになる物語なんです!
本当におすすめ!
是非読んでいただきたいっ!
最高でした。
いま読了直後なので、正直言って語彙力がすべてなくなっています。私の語彙力帰ってきて。まともなレビューを書けるだけの語彙力よ、帰って来てくれ。
ずっとずっと気にはなっていたのです。
除霊、イケメンすぎる女性、ハイパーポジティブ年下ワンコ、チラチラと匂わされる重い過去。私の好きな物が全部ここにあるわけです。しかもあれだ。シリアスすぎない文体。これ重要。宇部さんはっきりいって馬鹿の人だから、100%のシリアスは脳が拒否する人だから。そういう点でも本当にうまい。うますぎる。
うますぎると言えば、ちょいちょい出て来る料理の描写も最高。何だ、有瀬君(パリピ系年下ワンコ)、君、そういうのも出来ちゃう系の人?もう嫁いだら?下地はもう出来てるよね?ちょっと婚姻届だけ持ってきな?
男女バディ、マジで最高ですよ。お互いのタイプがまるっきり逆でね。それはそれはもう陰と陽でね。そんでもう『陰』の弐千佳さんはそれはそれはクールでドライなカッコいい女性なんですけども、その『陰』っぷりが凄くてね。一切の光を通さない『黒』みたいななね?そんな感じなんですけど、でも読んでいくとですよ、案外そうでもないんですよね。ちゃんと有瀬君のどぎついアロハを、じゃなかった『陽』の気を受け止められるというかね。そういうところある。この二人はお互いに、お互いの要素に負けないんですよね。どっちも否定しないんですよ。そこが良さなんだよねって尊重する度量があるんですよ。
私なら無理よ。「毎回毎回目に優しくない騒がしいシャツ着やがって、このパリピがよ」ってネチネチグチグチするところですよ。でも弐千佳さんはその辺凄いから。ちゃんと受け止めるから。騒がしいアロハを、じゃなかった、有瀬君の『陽』をね、ちゃんと受け止めるから。
もうね、全体的に何を書いてるか支離滅裂な感じになってきましたけど、私のレビューなんてね、もう『枯れ木も山の賑わい』ってやつだから。こんなのね、あってもなくても同じというかね。私はもうただただ読了後の「ちょ、マジ聞いて聞いて、すげぇの読んだんだってマジでちょっと聞いて?」っていうアレだから。いまさら私ごときが何を書いても書かなくてもこの作品の凄さは揺るがないから。
というわけで凄いの読んだぜ、っていう報告でした。
今更語るのも野暮なほどのレビュー数を誇る作品です。本作の面白さはレビューの数と質、そして熱量が証明しています。読みたいと思ったのでしたら、このレビューの山に圧倒されてしまう前に第一話のページを開いてしまうことをおすすめします。読み切れなかったレビューは、ぜひ本作を読み終えた後に堪能しましょう!
敢えて一つだけ本作について語るのなら、その読みやすさです。
洗練された文章、軽妙なセリフ回しでぐいぐい読ませてくれる筆力は流石の一言。
登場人物も少ないので非常に覚えやすく、ほとんどが主人公バディのやり取りで構成されているので自然と愛着も湧きます。それ以外の場面でもほぼ一対一のやり取りなので、まったく混乱せず読み進められます。
構成もよく練られていて非常にわかりやすいので、作品の理解を妨げることはないでしょう。
総じて配慮の行き届いた、素晴らしい作品でした!全力でおすすめします!!
ワケあり物件を専門に祓う無量弐千佳の元に現れたアシスタントの有瀬くんは見るからにチャラ男。
この2人を中心に物語は進みます。
霊を祓うのも特殊な霊能力を使ったりはするのですが、部屋の因縁などが一筋縄ではなくミステリー仕立てになっています。
また有瀬くんの能天気さもあってドロドロした展開がかなり救われます。
登場人物の性格や生い立ち、食事シーンなどは本当に引き込まれること間違いなし。
そしてそして、同著者の『なごや幻影奇想シリーズ』と同じ世界なのであの登場人物が出演したりして思わずニヤリ。
まだ読まれてない方は『なごや幻影奇想シリーズ』も読まれると楽しさ倍増すること保証します。
事故物件専門の異能除霊師・無量弐千佳は、一留中の大学生・有瀬安吾をアシスタントに起用して、死者の念が蟠る現場を清めていく……。
弐千佳さんが赴く現場には、その場所で命を絶った人たちのさまざまな感情が渦巻いています。残留思念が不幸を呼び、新たな犠牲者を生んでいく負の連鎖の背景には、住居という箱の数だけ艱難辛苦が存在します。
目を背けたくなるほど重苦しいそれらと、弐千佳さんはじっくりと腰を据えて向き合います。そんな生き方によって醸成されてきた陰りを、持ち前の明るさで照らしていくバディ・有瀬くんの活躍も見逃せません。人懐こい彼が、事故物件で作る手料理(!)も必見です!
濃密に描写されたドラマと、二人の掛け合いが絶妙にマッチしていて、あっという間にラストシーンまでたどり着いていました。特に大人の方々へおすすめしたい、極上のエンタメ長編でした!
この物語は事故物件や曰く付き物件の邪気を払うという、『霊的特殊清掃人』である男女のバディ作品です。
主人公は一匹狼なアラサー女性の無量弐千佳。
そのアシスタントとなるのが、ポジティブワンコ系大学生男子、有瀬安吾。
この二人の凸凹具合をメインに話は進んでいきます。
章ごとに話が終わる連作短編式の長編になっており、非常に読みやすい内容となっています。
主人公、弐千佳の目線で話は進み、章が進むごとに彼女が抱える問題が次第に浮き彫りになっていきます。
彼女はその「陰」の性質と性格から様々な事象を一人で抱え込んでいるのですが、アシスタント有瀬くんの存在により、彼女自身が少しずつ変わっていきます。
この作品を読んでいた私でさえも、有瀬くんの言葉の数々に何度も胸を打たれ、涙しました。
彼が発する純で真っすぐな言葉には、文字通りの浄化の力があり、その秘められた力によって弐千佳だけではなく、読者自身も助けられるのではないかなと思います。
曰く付き物件を二人で浄化していく様も見事で、二人の掛け合いにも笑ったり、ずっと味わいたい内容となっています。
和ファンタジー好きにもおすすめですし、ホラー作品やヒューマンドラマがお好きな方にも非常にすすめたい物語です。
きっと皆さまにも響くものが必ずあると思います。
既に沢山の方が熱いレビューを書いておられる本作品。
魅力ある作品であることは言うまでもない。
ならば何を書こうかと迷ったけれど、読了後思ったのは、なんて楽しい作品なんだ!ということ。
ホラーなのに。
勿論、シリアスな場面もあります。作品の性質上。
その辺りの描写もきちんと押さえておられます。
ただ、イケメンヒロインの無量弐千佳がそうであったように、ポジティブ過ぎるチャラ男の有瀬安吾の圧倒的な陽の気に、読者である私も巻き込まれて楽しくなってしまったのかな、と勝手に思っています。
それとイケメンヒロインの除霊方法も、独特で斬新だなと思いました。
令和の時代に相応しい主人公二人を創り出した作者様の力量に唯々感服するばかりです。
ヒューマンドラマの要素も含むエンタメ性抜群の本作品、連載中は続きが気になって更新を楽しみにしていた作品の一つでした。
続編があったら良いなあ。
オススメです。
まずは主役のふたりである。作品紹介を見ていただいてもわかる通り、なんとも正反対というべきか、だからこそ最高というべきか。
けれど正反対ゆえに、このふたりは最高のバディとなっていくのである。
舞台は事故物件、そこの除霊をしていくのだが、当然霊には霊になる理由がある。物事には必ず理由がある。しかも事故物件、そこの裏には当然何らかの「死」が絡んでいるのだ。
この描き方のさじ加減が絶妙で、会話のテンポや有瀬の明るさによって、変に重くなりすぎることはなく、かといって軽く扱っているわけでもない。
そして見逃せないのは、事故物件に絡む人間関係とそのドラマである。
さて、先に物事には必ず理由があると書いた。当然ながらある人物も「なぜそうなったか」という理由がある。
そしてそれを拾い上げ引っ張りあげる手腕、お見事でした。
最初から最後まで目の離せない一作です。
ぜひご一読ください。
読み終えてまず思ったのは「え、もう終わっちゃたの?」でした。それくらいに時間を忘れて夢中でページをめくれる作品です!この作者さんの長編作品の完成度は打率10割なので、もうこの作品が目に留まった方は今すぐ本編に走ってください。
本作は事故物件専門の除霊師、無量弐千佳と、そこにアシスタントとして入ることになった有瀬安吾の男女バディ作品です。
もうまず「事故物件」というテーマだけで惹かれる読者は多いでしょう。どんな霊が出るのか?どのような経緯で事故物件になってしまったのか?読者がまず持つであろう興味関心に、期待以上のエンタメで返してきてくれるのが本作品です。
扱うテーマは事故物件ですが、おどろおどろしいホラーではなくほんのりミステリー要素のある人間ドラマがメイン。少しずつ明かされていく霊の正体と事件の原因にページを繰る手が止められません。
またこの人間ドラマも人間の本質や闇を突いたものが多く、悍ましい事件の全貌に忌避感を感じながらもどこか共感してしまう部分があるのも本作が読者の心を掴んで離さないポイントかもしれません。
事故物件の陰を祓いながらも、自身の中に闇を持つ弐千佳。そして彼女を物理的にも精神的にも支えるのが圧倒的光属性の陽キャ男、有瀬安吾です。
隠と陽。正反対の気質を持つ二人の関係性も本作の見所の一つで、除霊師とアシスタントという関係だった二人が少しずつバディとして成長していく様子も目が離せません。時折爆笑してしまうくらいに面白いプライベートでの軽いやり取りも、仕事の時の緊迫感のある連携も間違いく読者を楽しませてくれるでしょう。
13万字も読んでしまったけどまだまだ読み足りない!シリーズ化してずっと読んでいたいと思わされるほどに読み応えと魅力がたっぷり詰まった作品です。
読んで損はさせませんよ!
事故物件専門の除霊師である弐千佳は、ある事情から見ず知らずのチャラ男を助手に迎えることに。あまりにも陽キャなチャラ男に困惑し苛立つ弐千佳だったが、なんだかんだ相性は悪くないようで……
事故物件を扱うお話とあって、非常に重く悲しいテーマを扱っています。
ですが、助手の有瀬のキャラクターや二人のテンポのいい会話などに救われ、概ね楽しく読み進められます。段々頼もしくなっていく有瀬くんと、彼との出会いによって変化していく弐千佳が眩しく見えてくるほど。
除霊のために事件の背景を探っていく過程では、(どれも悲痛な内容ではありますが)謎解きの面白さもあります。
そして最後には、弐千佳自身が奥底に封じ込めていた深い闇と向き合うことに。これがまた、胸を抉られるように辛い。読んでいる間、本当に苦しかったです。
弐千佳さん、頑張った。有瀬くん、ありがとう。
陰のあるクール美女に痺れ、料理上手でワンコなチャラ男に癒されること間違いなし。
すごく面白いので 激しくおすすめします!!
お仕事にまい進する女性と、男女のバディーもの(巻き込まれ型も含む)を書かせたら天下一品の作者様。
毎回「この人(このバディー)最高だよね」と思うのですが、次の作品では軽々とそれを超えてくるので、「引き出しの多さとはこのことか」と感服しきりです。
特に本作は、主人公の背負ったものが相当暗くて重いだけに、バディーくんが圧倒的な陽の要素の持ち主であることが、主人公はもちろんのことだと思いますが、読み手の私にとっても大変救いとなりました。
そんな彼自身も、こっそり何かを背負ってそうな気がするので、答え合わせの意味でも、続編が読めたらうれしいなぁ。
いつも真っ黒なツナギ姿にアンニュイな雰囲気を纏うイケメン美女、弐千佳(にちか)。対して大荷物を抱え、彼女にぴったりと付き従うのは金髪に柄シャツの青年、有瀬。
どう見ても正反対なこの二人、何やら仕事用らしきバンに乗り込み、迷いなくどこかを目指して走り出すが…?
そう。この二人こそ事故物件に染み付いた幽霊の念を祓い、住み良い部屋へと原状回復させる霊能者―― 『霊的特殊清掃人』なのです。
仕事のアシスタントを探していた弐千佳に紹介されたのは、なんとチャラそうな大学生の青年。大型犬のように遠慮なく距離を詰めてくる有瀬に最初は辟易していた弐千佳だったが、次第に彼の持つ圧倒的な陽の気(陽気ってことじゃありません。陽気ですけど笑)に関心を持つようになる。
しかし弐千佳もまた、生まれながらに大きな陰の気を孕む者。性格だけでなく力の性質もまったく正反対の二人には当然、いくつものトラブルが襲いかかります。それでも手強い霊たちと戦うたびに、二人はお互いにかけがえのない相棒だと気づいていく……。そんな男女のバディストーリーです。
物件に取り憑いた霊との対峙では時に心温かく、時に背筋が凍るような人間ドラマが展開されます。恨み、嫉妬、後悔――そして無念。何年、何十年と降り積もったそれらに対し真摯に向き合う弐千佳の姿勢は、まさに一流の仕事人。しかしそんな彼女でも、ひとりで仕事はできません。そこを精神的かつ胃袋的(笑)に支えてくれるのが有瀬という男なのです。どこにいったら会えますか?。゚(゚´ω`゚)゚。
霊の未練はふたりが物件で過ごすことで徐々に明らかになりますが、わかるようでわからないもどかしさ、結局いつも真相であっと驚かされるミステリ要素はかなりクセになります。ホラーの描写も適度(これ大事。私のような怖がりさんでも大丈夫な絶妙な塩梅です)な演出でひやりとします。そして前作となる某心霊シリーズを読んだファンにはたまらない、あのキャラとのつながりやお馴染みの飯テロ描写など――ああもう、魅力を語り尽くすにはレビュー欄では狭すぎる!(笑)
とにかくとにかく、確固たる筆力と面白さを兼ね備えた素晴らしいバディ・エンターテイメント!凸凹コンビはもう飽きたなんて台詞は、この作品を読み終えてから言ってくださいませ♡
除霊師の弐千佳さんは、クールな黒ツナギのイケメン女子。彼女が専門に除霊するのは、いわゆる事故物件。そこに居つく悪霊を払うのが専門。
その彼女の元に、新人の助手、有瀬君がくるのだが、彼は明るくてうるさくて軽い。弐千佳さんとは、まったく逆で、ちょっと苦手なタイプ。
彼の明るさに辟易しながらも、弐千佳さんはつぎの事故物件に挑む。
住む人に霊障を起こす事故物件。悪霊が住み、呪いと怨念が立ち込めるその室内に籠って彼女は除霊に挑むのだが、連れてきた新人助手の有瀬君が、とにかくうるさい、騒ぐ、騒々しい、しかも服装が派手。あげくの果てに料理を始める。……事故物件で。
物語は、事故物件の浄化ということで、とにかく内へ内へと入り込みます。その室内で過去に何が起こり、どんな霊障が起きているのか? それを無口でクールな弐千佳さんが体内に取り込んで浄化するという、インナー、インサイド、インドアの陰々とした設定。そこへ、あっけらんかとした有瀬くんがいい差し色になっています。
また、事故物件に蔓延る霊どもも、一筋縄ではいかない。根深い怨念や暗黒の過去、さらには解きがたい謎を孕んだ悪霊までいる。
本作は、凡百の除霊物にはない個性と完成度を誇るホラー物である。ただし、恐怖感はきつくない。また、連作の形をとっているので、ひとつのエピソードは長くない。さらに、男女バディー物である。
そういうのがお好みの方には、ドストライクの作品であろう。
この作品のいいところ? 全部です、全部!
まずキャラクター。弐千佳さんというかっこいいお姉さんと、安吾くんという大型犬みたいな陽キャ男が出てきます。正反対だけどお互いを受け入れ尊重し合い補完し合う最高のバディです!
事故物件というだけあり、棲みついた霊たちの過去は重苦しいものが多いのですが、これでもかというくらい苦しみをえぐる描き方がすごいです。すごいなんて言葉で言い表せないくらいすごい。でも大丈夫! 安吾くんが雰囲気を和らげてくれますので! たぶん読めばわかる。
いろんなところに伏線もあり、あれこれ考えながら読み進められるのも楽しみの一つです!
バディ好き、ヒューマンドラマ好きな方にはぜひ読んでいただきたいです。わたしの大好きな作品、ぜひ読んでくだされー!!!
ドライでちょっぴり暗い性格の無量弐千佳。
人懐っこくて明るい性格の有瀬安吾。
この二人が事故物件の後始末、「特殊清掃」の仕事に勤しんでいく物語……なんて言うと、いわゆる「お仕事系」のお話に聞こえるかもしれませんが。
まぁ、多少そういう性格はあるかもしれません。ですが特筆すべきはやはりこれ。
――事故物件に根付いた霊を祓う、まさに「特殊」清掃。
前の入居者が自殺したから割安で住める……なんて話はたまに聞きますね。いわゆる心的瑕疵物件というやつです。本作の主人公の一人、無量弐千佳はそうした瑕疵を癒す、あるいは塞ぐ仕事をしています。すなわち「事故物件に短期間住み、そこにいる霊を祓って物件の価値を元通りにする」仕事です。
この仕事に従事している無量弐千佳さんはある日、知人の伝手で妙に明るいチャラ男、有瀬安吾くんを助手として紹介されます。それまでも何人か助手を雇っていたのですが仕事柄なかなか適合する人に出会えず……そんなところにやってきたのが彼でした。
さてさて、そんな二人が立ち向かう事故物件は……おっと、ネタバレになりそうですね。控えます。
各章それぞれなかなか強力な霊が現れます。いずれもこの世に未練を残して死んでいった人たち。悲しみの中に、人生に対する「狂い」や「歯車の噛み違い」がひと匙。
そうした霊と向き合ううちに、それも安吾くんというこれまでとは違うアシスタントと仕事をしていくうちに、弐千佳さん自身の中でも変化が起きていきます。これは今までの助手ではなかったことみたいですね。安吾くんとの出会いは色んな意味で弐千佳さんに影響を与えます。
さて、お気づきの方はいらっしゃるでしょうか。
弐千佳さんの苗字「無量」と安吾くんの苗字「有瀬」。頭を取ると「有無」になりますね。
ここで二人の「気」についても触れます。
弐千佳さんは家系的に霊能力者の家で、「陰」の気を使います。安吾くんは天性の「陽」の気で、この二人、「陰陽」になっているんです。
有無と陰陽。反対の属性を持つ者同士が、お互いを補い合いつつ前に進んでいく物語。こう聞くだけでワクワクしませんか? バディものとしてとても面白い気配がありますよね。
本作にはそんな二人の目覚めも葛藤も前進も、悲喜交々、詰まっています。これを追うだけでもとても面白い。
しかもそれに加えて、各章ごとに「なぜこの霊はこんな悪さをするのか?」という謎解き要素も加わります。他の方のレビューを見れば分かりますが、ホラミス、と捉える向きもありますね。ですが人生での悩みや悶々とした思いへ正面から向き合う本作は、純粋な人間ドラマとしての趣もあります。
それぞれの章を読んだあなたなら分かると思います。どの章の霊も「相手がいなかった(欲しかった)」あるいは「相手に干渉しすぎた」「相手を突き放したかった」のですよね。陰陽の相手がいなかった、欲しかった。陰陽のバランスを崩してしまった。だから狂ったし、だから根付いた。いずれの霊も有無コンビの対比関係にあることに、きっとあなたも気づくはず。
僕が本作を読んで思うこと、それは「大丈夫、あなたのことを補う人はきっといるから」ということです。これは自分に向けてのメッセージでもありますし、これから本作を読むあなたへのメッセージでもありますね。
きっとこの物語に感じ入るところのある人は、恋愛だったり友人だったり家族だったり、何か人間関係に「瑕疵」があるのかもしれません。でも大丈夫、きっとそんなあなたを補う人がいるから。本作にはそんなメッセージがあるように思います。
この作品を読んだあなたは、今隣にいる人との関係を少し見直したくなったり、感謝したり、拒否反応が出たり、色々経験するでしょう。この物語は変化の物語でもあります。もう変わることのなくなった「霊」という存在に向き合う二人が、徐々に変化していく物語。その過程であなたが経験するような心の変化を作中の二人も経験していきます。
だから大丈夫、本作の二人が変化への向き合い方を教えてくれます。安心して、心揺さぶられてください。
この作品の二人はお互いに踏み込みすぎたり、距離を取りすぎたりはしません。安吾くんは弐千佳さんの根幹に触れようとはしませんし、弐千佳さんは安吾くんを突き放したりもしない。お互いがお互いのいやすい空気を大事にしている。タバコで一服する弐千佳さんとソフトクリームを堪能する安吾くんという場面が出てくるのですが、これが二人を象徴する空気感です。なんとなく分かっていただけますか? 弐千佳さんは安吾くんの顔に煙を吐きかけたりしないし、安吾くんも弐千佳さんにソフトクリームを強要したりしない。この空気が読者の僕としてはたまらなく愛しくなります。
こうした空気感の他にも、弐千佳さん自身の中に対比関係があったり、さまざまなところで「陰陽」関係があります。こうしたものを見つけていくのも楽しみ方のひとつかもしれませんね。
ただ、隣り合う。それだけで強くなれる。
そんな二人のお話です。
ぜひ、読んでみてください。