推理しながら読むのが楽しい霊的オムニバス
- ★★★ Excellent!!!
べったりと残る生活の跡――。賃貸住宅に住んだことのある人ならば、前に住んでいた人が残した傷などに気づくことがあるかもしれません。時として、彼らと時空を共にしているような薄気味の悪さを覚えることもあるでしょう。
本作の主軸となるのは、まさに「事故物件」。その建物を以前に使っていた人が、べったりと残していったもの――しかし、原因の不明なものを祓う異能の除霊師が主人公です。かつ、強い「陽」の気を持つアシスタントとの仲が非常に魅力的なコンビネーションを生んでいます。
いうなればこれは、霊感と頭を使う清掃業の物語と言えるのかもしれません。次々と現れる事故物件に巣食うもの・怪異の正体を一章ごとに推理し、そして、祓ってゆくのが本作のコンセプトとなります。
特に、本作の特徴となるのが、本気で怖いエピソードがいくつかあるところでしょうか。(特に「集団自殺マンション」はかなり怖かった。)
そんななかで、怪異の正体について推理しつつ読むのが非常に楽しかった作品でした。しかも、大抵は予想をかなり裏切られる原因が章ごとに用意されています。
そんななかで、光と影のような主人公とアシスタントの関係やいかに――? お互いに霊的に交わり合い、関係を深め、成長し合う姿をぜひともご堪能ください。