懐かしさと、発見。
- ★★★ Excellent!!!
教科書を保護者に読み聞かせる宿題が小学生の頃あったな――そんなことさえ私は忘れていました。あまりなかったか、それともまともにやらなかったかのかもしれません。
著者は、自身の子供の音読を聴きながら気づきます――子供の頃に習った作品が多く収録されていることに。『ごんぎつね』といった古くから載っているもの、『スイミー』など誰もが知るもの――。それらを紹介しつつ、大人になった今、新たな視点から物語を観ようというのが本エッセイです。
私自身、本エッセイによって数々の懐かしさ――そして発見に出会いました。取り上げられた作品に対する解説は、著者の高い観察眼と鑑賞能力を窺わせます。作品に対する愛情を感じる表現、温かい文章、細かい気づき――それらにより、「この作品を知っている」という懐かしさや、「思い出してみればこう感じる」という発見を超え、さらに奥深い世界へと導かれることとなります。
また、私が忘れてしまった(あるいは、習わなかった?)作品に出合えたことも何よりでした。(『大造じいさんとガン』――そんな男気溢れる作品があったことが特に印象強かったです。こうして物語を知られたことを期に、紹介された作品を実際に手に取ってみなければなりませんね。)
皆様も、タイムカプセルを開けるような感覚を本エッセイによって体験してみませんでしょうか?