今なき人。今なき時。そして今ある人をつなぐ共鳴の糸。

物にも人の心が宿る。

人形、茶壷、万華鏡、ブローチ――その物が生まれた過程、使っていた人の思い、果たすべきだった物の使命、様々な思いが物には宿っている。

様々な物に宿った思い(念)が生み出す怪異の数々。それに立ち向かうのが、探偵事務所を運営する伊達男・樹神皓志郎とその助手・服部朔だ。

本作は、著者の前作『共感応トワイライト ~なごや幻影奇想ファイル~』の続編である。しかし、短編連作形式になっており、設定などの説明も丁寧にされているので、前作を読まずとも愉しむことができる。

新旧の入り混じる、ノスタルジックでレトロな雰囲気のある名古屋の街。探偵事務所や古美術店。そこに現れる怪異の数々。物に宿った念と、それが原因となる怪異は、樹神探偵や服部少年、三河弁を遣う妖しい女性など、濃い人々の手によって一つずつ丁寧に解き明かされてゆく。

物にも人の心が宿る。しかし、その物を人は粗末にしすぎる――そこに宿るのは、今なき人、そして今なき時の残影であるかもしれないのに。

今なき人、今なき時をつなぐ共感の糸は、切ない思いへと一話ごとに我々を駆り立ててゆく。他ならない――記憶の糸をつなぐのは、服部少年であり、樹神少年であり、そしてこの物語のもう一人のヒロイン・カイコさんである。

糸によって手繰り寄せられた先に、どのような往時の思いがあるのか――そして、それに触れたとき、どのように心を揺さぶられるのか。

是非とも読んで、体験してほしい。

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