地方都市に差す茜色と、その向こうにある怪異。

名古屋――。行ったことがない人にとっては、ありふれた都市の一つでしかないでしょう。しかし、そうでない人にとっては、土着の文化があり、方言があり、年季の入った店舗が竝ぶ、どこか郷愁を誘う場所かもしれません。

そんな名古屋の街角で、「もういいかい」「まあだだよ」という子供の遊び声や、かごめ歌、童謡などと共に差し込む茜色。その向こうにあるのは様々な怪異が存在する異色の世界です。怪異は、時として現実世界に浸蝕して事件を起こします。

そんな事件に立ち向かうのは、樹神(こだま)探偵事務所の探偵・樹神皓志郎先生と、その助手である男子高校生・服部朔くんです。とくに朔くんは、闇を抱えた者の感情を受信することのできる特殊体質でもあります。

子供の頃の何となく不安な感情に似た薄気味悪さと、郷愁を誘う雰囲気の中で起こる怪異。樹神先生と朔くんの凹凸コンビと和風美女、そして時たま差し込まれる飯テロの描写も秀逸。思わず名古屋を訪れてみたくなること必至です。

そんな怪異の向こうに現れる、人の闇と、その切なさとは――?

是非、お手に取ってみてください。

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